お札とクリップを使った古典の有名な即席マジックがあります。
お札を曲げて2本のクリップを留め、引っ張るとクリップが跳んでつながるというものです。
よく子供向けのマジックの本などに載っていますが、実際に演じてみると確かにアイディアは面白いのですが、あまり見栄えのしないマジックであることに気が付きます。
クリップという素材自体の地味さもありますが、なにより肝心のクリップが跳んでいってしまうので、現象が曖昧になるのです。
このマジックはかの有名な「The Dai Vernon Book of Magic(通称バーノンブック)」にも載っています。
バーノン・ブックによると、このマジックはビル・ボウマンという人がダイ・バーノンに見せたそうです。
バーノンブックではお札とクリップの他に輪ゴムを1本使い、相手に輪ゴムを持っていてもらうと、その輪ゴムに2本のクリップが連結してぶら下がるようになっています。
これは素晴らしいアイディアで、クリップがどこかへ跳んでいってしまうのを防ぐと同時に輪ゴムを含めて3連となることで、より見栄えのするマジックになっています。
それだけでなく、ダイ・バーノンはこのマジックにメキシコの日雇い労働者のストーリーを加えました。
簡単に紹介すると、その日雇い労働者がやっとの思いで得たわずかな給料を、泥棒に盗まれないようにクリップと紐で留めておいたにもかかわらず、マジックのように鮮やかに盗まれてしまうというものです(だから最後にマジシャンの手元にお札が、観客の手元にクリップと輪ゴムが残るのです)。
このような簡単なマジックさえもきちんとストーリーを考えることで作品に昇華し、道具の理由付けをするのがダイ・バーノンの偉大なところです。
ところで、私は以前このマジックを練習しているときに、輪ゴムを2本使うこともできるのではないかと思って試してみたところ、なんと輪ゴム、クリップ、クリップ、輪ゴムという順番で4連につながることに気付きました。
ダイ・バーノンのストーリーは使えなくなりますが、これはこれで面白いのではないかと思い、教室やワークショップで紹介したことがあります。
今回ブログで紹介するために動画を撮りましたので、以下に掲載します。
もしかしたら私以前にも4連につながるアイディアを思いついた方もいるかもしれませんが、少なくとも私は見聞きしたことがありませんので、詳しく知っている方がいらっしゃいましたら教えていただけると幸いです。