以前はマジックショップというものはかなり敷居が高く、実際に足を運んでみても、そもそも店があるんだか無いんだか分かりづらかったりするものでしたが、昨今では誰でも気軽にマジックショップの通販サイトで道具やDVDを買えるよるようになりました。
しかし同時に、自分のレベルに合っていなかったり、用途に合わないものを買ってしまう可能性も増えました。特に、一見派手で凄そうな新商品は要注意で、古くからある地味な定番商品に価値があったりします。
そこで今回は初心者~中級者くらいの方に、マジックを続けていくなら持っていて損のないマジックグッズを紹介したいと思います。初心者の方はもちろん、中級者の方でも、見過ごしていたり、なんとなく素通りしていたものがあれば、ちょっと見直していただければと思います。
なお今回はクロースアップ編であり、ステージ、パーラー編はまた今度書いてみようと思います。
1.デック類
まず最優先なのはデック(トランプ)です。もしバイシクルやタリホーを使ったことがなければぜひ使ってみてください。ただし、レギュラーデック(通常のトランプ)のバイシクルであればマジックショップでなくとも、玩具やゲームを扱う店でも買えます。
マジックショップならではの商品では、トリックデック(仕掛けのあるトランプ)の類があります。トリックデックの中でも、おすすめはやはり古くからある定番のもので、スベンガリ、インビジブル、ストリッパーなどは使いやすいと思います。逆に最近発売され、まだ評価が定まっていないようなトリックデックは、あえて初心者が試す必要はないかと思います。
トリックデックに限らず、ギミックを使う場合全般にいえるのは、ギミックはテクニックを補ってはくれない、ということです。ギミックはまるで小鳥やハムスターのような体の小さいペットのようなもので、あなたが餌をやり、世話をして、大事に育ててあげなければ死んでしまいます。ギミックに頼るという発想は以ての外で、あなたのテクニックでギミックを守ってあげなくてはいけないのです。しかし、大事にすれば素晴らしい魔法に育ちます。
トランプはレギュラー、ギミックともに消耗品です。大切に使っていても、いつかはボロボロになって汚くなったら、思い切って捨てる勇気が必要です。
2.コイン類
コインに関してもまずはレギュラーコインが良いと思います。日本円で良い、という考え方ももちろんありますが、このキャッシュレスの時代に500円玉を4枚も5枚も持っているのは明らかに変です。どうせ変なら、見栄えも良く、扱いやすい大きなコインを使っても良いはずです。
私のおすすめはやはりクロースアップからサロン、ステージまで万能なハーフダラー(アメリカの50セントコイン)です。様々な作品が練習できるように考えると、まずはハーフダラー6枚、イングリッシュペニーまたはチャイニーズコイン1枚をそろえると良いと思います。
イングリッシュペニーはハーフダラーとサイズが近い銅貨で、ハーフダラーとはっきり色が違い、2種類のコインを使う場合に便利です。しかも実際に流通していたコインであることも強みです。
チャイニーズコインはマジック用にハーフダラーと同サイズのものが作られており、ペニー銅貨以上にハーフダラーとのコントラストが強いことが利点です。実際に流通したコインではないのが弱みですが、「魔法のコイン」などの演出でカバーできる範囲だと思います。ペニー銅貨とどちらが良いかは好みによります。
ギミックコインに関しては供給が不安定で、扱いの難しいものも多いのでおすすめは多くはありませんが、ジャンボコイン、ハーフ/ペニーのダブルフェイスくらいは、もし売っていれば買っておくのも良いかと思います。
コインはカードと違い、一度買えば一生ものですから、意外と安上がりなマジックでもあります。ただし、マジック用の大ぶりのコインは、普段使っている財布や小銭入れに入れておくと非常に邪魔で、なくす可能性もあるので、別の小銭入れを用意した方が無難です。小さい小銭入れは最近あまり売っていませんので、こちらもマジックショップで探した方が早いかもしれません。
3.マット
自分はプライベートで、即席マジックしかやらないからマットは使わない、という方もいらっしゃるかもしれませんが、まずは練習のときだけでも使ってみることをおすすめします。
そして、これは本当に喜ばしいことですが、いつかあなたが依頼されてマジックを演じる機会があるかもしれません。最初は出演料などなくても、10分なり15分なり、まとまった時間で演技できる機会は大変貴重で、マジック人生のハイライトともいえる時間です。そんなときはぜひマットを使ってほしいと思います。きっと喜ばれると思います。
マットのサイズはおおよそ30×40cmくらいのやや大きめがおすすめです。テーブルホッピングをするマジシャンが時々使っている20×30cmくらいの小ぶりのものは最初に買うマットとしては小さすぎて、できるマジックが限られてしまうのでおすすめしません。
4.スポンジボール
ちょっと意外かもしれませんが、4つめはスポンジボールです。カードやコインなどの渋めの道具が好きな方は真っ赤なスポンジを敬遠しがちですが、まぎれもないクラシックであり、傑作です。
説明書に書いてあるような基本の使い方から、スポンジボールだけで1本のDVDになっているものまでありますから、非常に奥の深いジャンルです。超至近距離のクロースアップから、サロン、ステージでも使えます。それはやはり視認性の良さが他の道具と比べて優れているからです。
様々なスポンジ製品がありますが、まずは直径40~50mmのボールが4つ位あれば良いと思います。意外と耐久性があり、ときどき水洗いして清潔に保てば長く使えます。乾かすときはタオルの上などにおいて自然乾燥させます。
おわりに
今回はクロースアップマジックにおける基本的で長く使える4つの道具をご紹介しました。おそらくこれらの道具は上級者になっても長く付き合っていくものだと思います。新商品や紹介動画に惑わされず(?)、まずは基本の道具を揃えてみていただければと思います。