マジックを学ぶ大きな動機の一つである(?)、「マジックをするとモテる」という説について、また、これもよく言われる「マジックはコミュニケーションの道具」という説について、私なりの考えを述べたいと思います。
マジックをするとモテるのか?
マジックをするとモテるというのは基本的には誤りで、モテる人はマジックをしてもしなくてもモテるというのが真実だと思います。ただし、すでにモテている人がマジックを覚えると多少プラスアルファになることはあると思います。
私はどちらかというと、モテない人がマジックを覚えてモテようとするのが少し危険だと考えています。というのも、マジックにかなり熟達し、まるで息をするようにマジックができるようになれば話は別なのですが、普通の人はマジックを演じようとすると緊張します。この緊張が曲者で、基本的に他人から好意を持ってもらうためにはリラックスして余裕のある態度が必要です。
人に好かれるにはできるだけ余裕をもって相手を思いやることが大切ですが、マジックによって無駄な緊張感が生じてしまうと逆効果になるおそれがあるからです。
マジックはコミュニケーションを円滑にできるのか?
マジックでモテるとまではいかなくても、話のタネくらいにはなるし、コミュニケーションに役立つのではないか、と思う方もいると思います。しかしこれも個人的にはその人次第かなと思っています。
人とコミュニケーションをして、仲良くなるというのは、ある意味自分を少しずつさらけ出していくことなのではないかと思います。ところがマジックではサーストンの三原則通り、通常は種明かしをしてはならないと言われます。すると、相手にマジックを見せた結果、その人に対して、さっそく一つ隠し事が増えることになります。多少マジックがウケたとしても、これで相手との距離が縮んだのかどうかよくわかりません。
私の観察では、多くのマジシャンはマジックをしなくても周りと円滑にコミュニケーションをとり、人とうまく付き合うことを大切にしている気がします。当のマジシャンすら、あまりコミュニケーションの手段としてはマジックを利用していない気がするのです。
長期的にはプラス?
先ほど書いた通り、マジックには緊張がつきものです。毎回極度の緊張に打ち克ち、初対面であっても、多人数であってもマジックを成功させるメンタルを身につけていけば、人前でも物怖じしなくなり、堂々と振る舞えるようになるかもしれません。そして私はそれをとても格好良いことだと思っています。
また、マジックを本当の意味で成功させるには、相手のことをよく考え、サービス精神、奉仕の精神も欠かせません。そのような考え方はコミュニケーション能力の向上に十分役立つのではないかと思います。
やはり、モテることも、コミュニケーション能力も、そしてマジックも、一朝一夕には身に付かず、長い目で成長していくしかないのだと思います。