前回に続き、YouTube対策の考察で、今回は相手が子供の場合です。
相手が子供の場合
今や子供の娯楽はテレビよりもYouTubeというくらい、子供たちはYouTubeが大好きです。「YouTubeで見たから種を知ってる」というセリフを言うのはむしろ大人より子供です。ただし、私自身はあまりこのセリフに遭遇したことはなく、昨年も子供にマジックを見せる機会は何度かありましたが、特に感じませんでした。
というのもやはり、前回の記事で書いたように、自分が動画で見たマジックと、今目の前で演じられたマジックを結び付けるのは容易ではないからではないでしょうか?
しかし、危険なシチュエーションもあります。子供たちのコミュニティにマジシャンが入っていって演じる場合です。具体的には、学校や幼稚園、児童館、地域の子供会などです。子供たちが完全に自分たちのテリトリーだと認識している場所で、周りも顔見知りの子ばかり、という環境の場合、いくらでも暴走する可能性はあります。
誰か一人が「そのマジック、YouTubeで見た!」などと言うと、他の子も「自分も見た」などと言い出します。しかし、実際には見ていない可能性が高いです。例えばマジシャンがロープを出しただけで、「それ知ってる!」という子もいます。ロープのマジックはこの世にたくさんあるのに、です。
そのような場合は慌てずに、「これはYouTubeのマジックとは別のマジックかもしれないよ」「最後まで見ないと同じマジックかどうかはわからないよ」などと正直に、きちんと説明します。結局、実際にはそのマジックを正確に知っている人はいない場合がほとんどですから、最後まで演じてしまえば、ちゃんと驚いてもらえると思います。
子供が「わかった!」「知ってる!」と言うのは、実は大人にも責任があるかもしれません。勉強でもなんでも、知っていれば褒め、知らなければ叱り、わかったら褒め、わからなければ叱る、ということを繰り返していくうちに、子供はわからないのに「わかった」、知らないのに「知ってる」と嘘をつくことを覚えていくのかもしれません。
マジシャンは、残念ながら一回限りのショーで子供の人格にまで影響を与えることは難しいと思います。しかし、私が継続的に関わる子供、例えば私のマジック講座に通ってきてくれる子などには、わからないことは「わからない」、知らないことは「知らない」と正直に言うことが大切だということは伝えていきたいと思っています。
少し話が脱線してしまいましたが、実は今回のYouTube対策の話は、YouTubeが現れる前からずっと存在していた問題です。以前は、「テレビで見た」「本で読んだ」だったのが、「YouTubeで見た」に変わっただけともいえます。
ところで、プロマジシャンはYouTubeに関して、気を引き締めなければならない部分もあると思います。即ち、YouTubeは無料だから、マジックも0円、マジックは無価値である、と思われないようにしなくてはいけません。YouTubeにより、ただちにプロマジシャンに大きな影響があるわけではありませんが、ひとつの時代の変化の中で、マジシャンはどのように価値を生み出していったらよいか、私も考えていきたいと思っています。