マジックの世界に未だ残るインターネット上での種明かし問題ですが、2025年現在の私の考えを書いてみます。
違法か合法か
マジックの種明かしそのものについては、そもそも違法でない場合が多いです。自分自身で文章を書いたり、写真や動画を撮ったりしてマジックを解説するのは基本的には違法になりません。
ただし、最近発売された道具、本、DVDなどを勝手にYouTubeなどで解説してしまうのは明らかに製作者や販売者に迷惑がかかるのでやめた方が良いでしょう。
また、明らかに著作権法違反となるのは、例えば本をそのままPDF化して掲載するとか、DVDをそのままYouTubeに投稿するなどです。これらは種明かし関係なく違反になります。
パブリックドメインについて
私が皆さんにぜひ考えてほしいテーマがパブリックドメイン、つまり著作権切れの著作物についてです。
多くの国では著作者の死後70年で著作権切れとなるようです。著作権が切れると、その著作物はパブリックドメインとなり、著作権関係なく誰でも自由に使えるようになります。
日本では夏目漱石や芥川龍之介といった作家の作品がすでに無料で読めることは周知の事実です。
マジックの世界で有名なのはヒューガード&ブラウエの「ロイヤルロードトゥカードマジック」です。この本はすでにパブリックドメインとなっているため、誰でもインターネット上で無料で読めるようになっています。
例えば実際に以下のリンクからも読むことができます。
The Royal Road To Card Magic : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archive
私はこのように著作権を無制限に認めることはせず、一定の期間を経て人類全体の知的財産とするのは良いことだと思っています。それはマジックに関するものも同様です。
しかし同時に、これはまぎれもなくインターネット上の無料の種明かしに違いありません。
もし、インターネット上の種明かしを一切してはいけないことにするのなら、このようなパブリックドメインの扱いはどうするのでしょうか?
また、「ロイヤルロード~」のように著作権が切れた著作物は、誰でも自由に読めるだけでなく、例えば日本語に翻訳するのも自由です。
実際、これだけ古い英語の本を一生懸命読もうという日本のマジックファンは少ないでしょう。
ですから、例えば私が頑張って日本語訳してこのブログに掲載するのも自由ですし、内容をYouTubeで実演しながら解説するのも自由です。(もちろんその労力をかけるだけの見返りがあるかどうかはわかりませんが。)
ゼロか、100か、ではない
現在の私の考え方としては、何でもかんでも無制限に種明かしをして良いとは思っていませんが、それと同じくらい、何でもかんでも一切の種明かしをしてはいけない、という考え方も正当性がないのではないかと思っています。
特にパブリックドメインに関しては、掲載をやめさせる権利がない上、人類の文化の発展にとってむしろ良いことだと思うからです。
逆にもし、私の意見に真っ向から反対して、インターネット上の種明かしはすべて禁じるべきだ、という方がいたら意見を聞いてみたいとも思います。
しかし、おそらくそこまで極端な人は少ないでしょうし、いたとしても論理的な説明は不可能なのではないでしょうか。
大切なのは、ゼロか100かではなく、マジックの発展、そして人類の発展にとってプラスになるか否かを各自が考えることなのではないかと思います。