以前、あるマジックコンテストにて、若手マジシャンが審査員である大御所のマジシャンに苦言を呈されました。
それもコンテストの内容ではなく、コンテストの時間外において、「誰でも通るロビーで練習してはいけないよ」とのことでした。
コンテスタントは演技中だけでなく、会場に着いてから会場を後にするまでの一挙手一投足を審査されている、というコンテストの厳しさを物語るエピソードでもあります。
とはいえ、これはマジックの世界に限らず、学校の入試や、会社の面接などにおいても同じでしょう。
会場にいる間、すべては審査対象なのです。
なぜ人前で練習してはいけないのか
マジックや芸事の世界では、「人前で練習してはいけない」というのはよく言われることです。
なぜいけないのか、というのを一言で説明するのは難しく、いくつかの理由があります。
1.種を広めないため
マジックの場合、種をむやみに広めてしまわないようにするため、というのが1つです。
公共の場で練習するのは、まったく見る気がない人にまで、種を見せつけることになりかねません。
YouTubeの種明かしでさえ、その動画をクリックしない限り見ることはないのですから、考えようによってはYouTubeの種明かしより罪が重いといえます。
2.努力を見せないため
もう1つは「努力を見せびらかさず、成果物だけを提供する」という、芸事全般における美学です。
お客様にとって大切なのは、その芸や作品がいかに美しく、面白く、素晴らしいものであるかであり、それを行うのに如何に苦労したのかというのは評価に関係ありません。
また、こちらが主張しなくとも、かけた努力や苦労はお客様が自然に感じ取って評価をしてくれるものです。
ですから、練習を見せるのは芸事の美学に反するのです。
3.迷惑をかけないため
他にも、シンプルな理由として、迷惑だから、というのもあります。
マジックはたいてい小道具を使います。
特に、いつでもどこでも練習したくなる素材としては、コインやボール、トランプなどが挙げられるでしょう。
そのような小道具を落とすと、それなりに音がしますし、周りに転がっていってしまうことも良くあります。
人を幸せにするためのマジックで、人に迷惑をかけてはまずいという発想です。
4.上達のため
練習は量よりも質が大切です。
特に注意散漫な状態でいい加減に練習をすると、かえって下手になることすらあります。
練習の環境は整えた方が良いのです。
ちょっと厳しく感じるかもしれませんが、家族の前であっても練習はしない方が良いでしょう。
家族にお願いして、練習中のマジックの試演をするのは良いと思います。
しかし、完全に練習を見せてしまうと、試演の前に種が知られてしまい、試演の意味もなくなってしまいます。
普通の人にとって、種を知っているマジックを種を知らないつもりで見るというのはすごく難しいことです。
特にアマチュアマジシャンにとって家族は貴重な試演相手ですから、大切にしましょう。
どうしても外でマジックの上達をしたいとき
人前で練習することは、それ自体は良くないことですが、上達したい気持ちが強いことの証でもあり、その点は良い傾向であるといえるでしょう。
例えば、カフェや電車の中で、マジックの練習をするのは憚られるとして、どの程度なら許容されるでしょうか?
例えば、手帳やノートを取り出して、手順やセリフの整理をすることはできそうです。
また、イヤホンを使ってスマートフォンでマジックの動画を見るくらいなら、誰の迷惑にもならないでしょう。
いつでもどこでも練習したいというモチベーションは素晴らしいので、加減が大切だと思います。
