嫌いな理論:道具は練習用と本番用で分けましょう

最近ではあまり見かけなくなりましたが、昔の本などではときどき書かれていました。人様に見せるのに汚い道具を使うのはやめましょう、という意味では正しいのですが、私は道具の使い分けには反対派です。

書名や著者名は忘れてしまいましたが、カードマジックの本でも「トランプは練習用と本番用で分けましょう」と書かれているのを見たことがあります。つまり、トランプは2組買って、1つは練習用、もう1つは本番用として使い分けることで、練習用は汚れや傷みを気にせず長く使用でき、本番用は使用回数自体が少なければ、これまた長く使用できる、という理屈です。

しかし、私はこれは失敗の元だと思います。バイシクルなどのトランプは新品の状態がもっともさらさらとして滑りが良く、使えば使うほど滑らなくなっていきます。よって練習用として使い込んだトランプは新品とは似ても似つかないような使用感になってしまい、練習用に慣れた状態で本番用トランプで本番に臨むと、かなり失敗しやすくなると思います。

だからトランプは本番用で練習してしまってよいのです。逆に言うと、「本番では使えないな」と思うくらい汚れたり傷んだりしたら、練習用としても使えないということです。

また、これはカード以外の消耗品についても同じことが言え、使用感が変わることから、練習用と本番用は分けない方が良いと私は考えています。

それではコインや四つ玉などの基本的に消耗しない道具に関してはどうかといえば、私はこれらも本番用で練習することをおすすめします。よく、「道具が手になじむ」などという言い方をしますが、これはあくまで慣用表現で、実際はそんなことはありません。「道具が手になじむ」のではなく「手が道具になじむ」のです。

ということは自分の手に道具の形や大きさ、重さ、質感などを覚えさせることが大切ですので、やはり本番用の道具で練習するのが良いといえます。

ただ、例外的に、即席での対応力を上げるために色々な道具で練習してみる、というのは有効だと思います。例えばあえてプラスチック製の安いトランプでも練習しておくとか、コインもハーフダラーだけでなく、その場で借りた小銭でもできるように500玉や10円玉でも練習しておくなどです。しかしこれらも本番を想定した練習という意味では同じです。

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