ドラマ「霊媒探偵 城塚翡翠」第1~3話&小説「invert」レビュー

以前、小説「medium 霊媒探偵 城塚翡翠」の感想を書きましたが、最近TVドラマ化されましたので、その第1~3話の感想と、原作小説の続編となる「invert」の感想です。ネタバレはほとんどないつもりですが、多少ございましたらご容赦ください。

ドラマ版1~3話 感想

主人公の城塚翡翠(じょうづかひすい)は翡翠のような緑色の目を持つハーフの女性で、まず見た目はもちろん、性格、言動から何から何まで絶対に現実にはいそうにないタイプです。小説ならではの表現として魅力的なのですが、実際に人が演じるとなると非常に難しそうだと思っていました。

もちろん完全にイメージ通りというわけにはいかないだろうと思って第1話を見たところ、ちょっと不安な要素が出てきました。というのも主人公はクールでミステリアスな霊媒師という面と、か弱くコケティッシュな女性という二面性が大きな特徴で、そのギャップがキャラクターの魅力というだけでなく、クライマックスを最大限に生かすための要素のひとつとなっているのです。

ところが第1話ではクールな印象が強く、あまり二面性を感じませんでした。そのため、論理的な推理を担当する相方の香月史郎(瀬戸康文さん)とのコントラストも弱くなってしまい、ドラマ全体がやや暗い印象になってしまいました。

しかし、2~3話を見て、城塚翡翠(清原果耶さん)のキャラクターが徐々に変化してきました。香月さんに惹かれている感じが強くなり、クールキャラが影を潜めました。より原作に近づいており、なにより今後の展開を考えると原作ファンとしては安心です。

ところで、原作を読まずにドラマを見た方は筋書きについてどう感じたのでしょうか?やはりひとつのストーリーを1時間に圧縮すると、かなり足早で色々と説明不足は出てきてしまうかなと思います。原作は大変精緻に描かれているので、やはりどちらかといえば私は小説版がおすすめです。

小説の「medium」は4話掲載されているので、私はてっきりドラマでは1話を2~3回に分けて放送するのだと思っていました。ところが先述のように、かなり足早に1時間で1話のペースで進んでいくため、ドラマで3回目の放送が終わった時点で、mediumは残り1話しか残っていません。

さすがに最後の1話を6回とか7回とかに分割して放送することはないと思います。しかし、そうすると霊媒探偵シリーズの続編「invert」に突入してしまうのでは?と思い、最近急いでinvertを読み終えました。やはり原作ファンとしてはドラマより先に原作を読み終えておきたいものです。

小説「invert」感想

invertは副題に「城塚翡翠倒叙集」とあるように通常のミステリとは逆に、最初から犯人が分かっており、それをいかに探偵が追い詰めるかという構成でつくられた作品集です。

全体的な感想としては女性版・古畑任三郎だなと思いました。実際、作者もかなり意識しているであろうパロディが多数含まれています。

私は古畑任三郎も大好きでしたが、もし自分が犯人なら決して出会いたくない、うっとおしい存在が古畑さんです。その古畑を若い女性に置き換えて、相沢沙呼さんの感性で練り上げるとこんな感じなのだと思います。

出来栄えとしてはさすがに前作のmediumには及びませんでしたが、十分に面白かったです。そもそも大人気シリーズの2作目というのは、なかなか1作目を超えられないものですが、それは仕方ないことですし、むしろ1作目のキャラクターや世界観が気に入って安心して読めるのがシリーズ物のメリットだと思います。

また、マジシャンでなければ絶対に気づかないように作中にネモニカを忍ばせているのも凝っていると思いました。さすがは令和の泡坂妻夫です(そんな呼び方はありませんが、泡坂さんはマジック愛好家の推理作家だったため私はそう評しています)。

ちなみに本書は真っ赤なカバーを外すと深い緑の表紙が出てきます。invertのタイトル通りに色が反転、赤の補色である緑になるというわけです。

翡翠シリーズはすでに第3作「invertⅡ」が出版されています。これも近いうちに読んでみようと思います。

“ドラマ「霊媒探偵 城塚翡翠」第1~3話&小説「invert」レビュー” への2件の返信

  1. 「invert 城塚翡翠 倒叙集 #01 雲上の晴れ間 2022年11月20日放送」を見ました。
    バックパームから写真を一枚取り出すシーンがありましたが、パーム漏れも無くて見事な手捌きに驚きました。
    プロマジシャンが監修しているのでしょうかね。。。

    1. スパム防止のため、コメントを承認制にしており、すぐに反映されないことがあり、申し訳ございません。

      マジック監修は前田知洋さんがされているそうです。映像作品なので撮り直しやカメラアングルの調整が利くとは言え、清原さんと前田さんは流石でした。

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