演技時間と演目数

今回は演技時間(演目ごとにかかる時間)と演目数(レパートリーの数)について考えてみたいと思います。

まず大前提として、初心者の間は自分の得意なマジックをしっかり演じることだけを考えればよいと思います。無理に時間を引き延ばそうとか、オープナー(最初に演じるマジック)用とか、あまり考えても効果が薄く、きちんと不思議に見せられるマジックを演じるのが大切です。

演技時間

ひとつの演目にかかる時間は初心者から上達するにしたがって、長→短→中の順に変化していく傾向があるように感じます。つまり、最初は色々なところで手間取ったり、無駄な話を長くしてしまったりして、演技時間が長くなりがちです。

しかし練習してスムーズになるにつれ、演技時間は短くなっていきます。短い時間にマジックが凝縮されるのは良いことなのですが、初心者の頃には気づかなかったような物足りなさを感じることもあります。

たくさんのマジックを知り、いろいろな人が演じているマジックを見ると、自分のマジックの足りなかった部分に気が付きます。徹底的に無駄を削ぎ落していったからこそ、添加の余地が生まれます。

添加する内容としてはいろいろありますが、例えば、話の枕、検め、設定の説明、などが挙げられます。どれも初心者にとっては難しいですが、中級者の方にはぜひ一度考えてみてほしい内容です。

「話の枕」とは、マジックの導入のセリフのことです。「それではマジックを始めます」などと言って単刀直入にマジックを始めるのもダメなわけではないのですが、こころに余裕ができてくると、あまり唐突にマジックを始めるのもどうかな、と思えてきます。

簡単に言えば、雑談から自然な流れでマジックにつなげたいわけですが、この具合が難しく、マジシャンたるもの、ずっと悩み続けなくてはいけないテーマです。

「検め(あらため)」とは種も仕掛けもないことの証明のことです。最も愚かな検めはマジシャン自ら「種も仕掛けもありません」と言ってその言葉を信じ込ませようとするだけの検めです。これでは検めになっておらず、これを信じろという方が無理な話です。さりげなくトランプの表を見せてからシャッフルするとか、道具によっては観客に渡して調べさせるなどの方法が有効です。

何をどれだけ検めるのが効果的か、というのがマジシャンのセンスの見せどころで、検めても意味のないものはくどくど検めず、疑われやすい部分はしっかりと検めるメリハリが大切です。検めを省略するとマジックとして成立しないこともある一方、なんでもかんでも検めればよいわけでもないのです。

実を言うとコロナ禍において、私はあまり検めなくても成立するマジックばかりを選び抜いてイベントなどで演じてきました。しかし、今後は社会の緩和に合わせて、演じられるマジックの幅も広がっていくので、その点は非常に嬉しく思っています。

最後に「設定の説明」ですが、即ち「なぜ不思議なことが起きるのか」の説明です。初心者の頃は「マジックなんだから不思議なことが起きて当たり前」とばかりに演じても良かったものが、だんだんと設定の重要さに気が付き、設定がしっくりと腑に落ちるマジックは観客にも受け入れられやすいことがわかってきます。

このように、自分のマジックがスムーズに演じられるようになったら、今度は逆に適切な添加(プラスアルファ)をすることで、演技時間が長すぎず短すぎず、ちょうどよくなっていく気がしています。

演目数

私は基本的にはレパートリーは頑張って増やした方が良いと思っていますし、私自身も日々レパートリーを増やすべく努力しています。とはいっても、100とか200のレパートリーを仕上げるのは容易ではありませんし、質より量になってしまうのもよくありません。

ただし、ある程度長くマジックをやっているのにレパートリーが1つか2つというのは寂しいです。ステージメインにしても、クロースアップメインにしても、10くらいは欲しいと思います。

また、10のレパートリーを選ぶとき、あまり類似のマジックばかりだと意味がありません。例えばロープの復活、リボンの復活、糸の復活の3つのマジックを覚えても、それらを同時に演じることができません。現象や素材などがバラエティに富んだマジックを覚える方が役に立ちます。

もちろん、現象や見え方がはっきり違うのであればカードマジックを複数覚えるのは問題がなく、むしろ窮地を救ってくれることが多々あると思います。

まとめ

個人的には20分のショーを演じられればアマチュアマジシャンとしてはかなり立派だと思います。しかしそれには適切な演技時間の演目が複数必要です。少数のマジックを無理やり引き延ばして20分を埋めるのではなく、かといって20個のマジックを羅列して20分経つのでもなく、オリジナルでなくても良いから少しでも自分で工夫したレパートリーでショーができたら、これ以上の充実はないと思います。

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