自由とテクニック

皆さんは子供の頃、真っ白な紙を渡されて、自由に絵を描いて良いよと言われ、はみ出さんばかりに思い切り好きなものを描いたことがあると思います。

しかし、今はどうでしょうか?大人になると逆に自由に描けなくなってしまうこともあるのです。

子供の頃は好きなものもはっきりしていて、恐竜が好きだったり、お姫様が好きだったり、大人は何を描いても褒めてくれるので、上手いか下手かも気にせずに描くことができました。

ところが大きくなるにつれ、徐々に子供の頃好きだったものからも興味が薄れ、上手い下手の判断基準も身についてきます。

むしろそれは成長の証で、悪いことではないと思います。(子供の頃の興味に、大人になっても情熱を注ぎ続けられることは珍しく、それはそれで素晴らしい才能なので大切にして良いと思います。)

普通は大人になると真っ白な紙を前にして、「さて何を描こうか」と悩んでしまい、また、「良い年をしてあまりに拙い絵を描いたら馬鹿みたいだ」と考え、結局描くのをやめてしまう人も多いのではないでしょうか。

もう一度子供の頃に戻って、自由闊達な絵が描ければ良いのですが、なかなか難しいものです。

私の答えは技術、技法、テクニックを学ぶことだと思っています。

絵画はそのマテリアル(素材、画材)、モチーフ(描く対象)ごとに、様々なテクニックがあり、それを学ぶことで、誰でも上達できます。

ところが、技術を学ぶと自由は失われます。描く順番だったり、道具の扱い方がある程度決められてしまうからです。

しかし私それで良いと思っています。大人が自由に絵を描くためには、むしろある程度ルールや制限があった方が描きやすいものです。

マジックも同様で、自由自在にマジックを演じるためには、たくさんの技術や理論を知らなくてはいけません。

しかし、一見自由自在に演じているように見えるマジシャンも道具の扱い方や話す内容など、多くのルールにしたがっているものです。

マジックを学びはじめたばかりの頃は物の持ち方やトランプの切り方まで細かく指定されて、がんじがらめのように感じます。

ところがそれが今後マジックを自在に演じるために必要不可欠なものとなります。

また、オリジナルマジックを考えようとしても、最初は理論的なことがわかっていないため、現象に矛盾が生じたり意味のない手続きが踏まれてしまったりします。

オリジナルマジックについても、既存のマジックをかなり学んでからでないと良い作品は生まれません。逆に既存のマジックを練習、実演して深く理解していく中でオリジナルが生まれる可能性は高いと思います。

自由になるためには、一度不自由になることが大切です。

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