マジシャンはそろそろシルクハットをやめよう

マジシャンのイメージとして、未だにシルクハット、あるいはトップハット、オペラハットのイメージがありますが、これはそろそろ辞めるべきです。そしてマジシャン自身が変えていかなくてはいけません。その理由をお話します。

衣装に合っていない

大前提として、燕尾服にシルクハットでビシッと決めたスタイルのマジシャンはとても格好良いと思います。しかし、昨今では燕尾服以外の衣装のマジシャンはとても多いと思います。実はタキシードですら、シルクハットはフォーマルすぎて合いません。タキシードやその他の衣装の場合は、ドレスコードとしてシルクハット、トップハットは合いませんので、かぶるのはもちろん、小道具として使うのもミスマッチだと思います。

イメージに頼ってはいけない

マジシャンといえばシルクハットだから、シルクハットを小道具として使えば雰囲気が出るだろう、という発想もあまり褒められたものではありません。それはあくまで先人が創り上げたイメージを利用しているに過ぎないからです。

例えば、アマチュアマジシャンの中にはBGMに「オリーブの首飾り」を流せば、マジックらしくなるし、盛り上がるだろうと安易に考えてしまう人がいます。もちろん、ある程度は盛り上がると思いますし、あるいは「オリーブの首飾り」を初めてマジックに使った先駆者である松旭斎すみえ先生が「オリーブ~」を使うのは素晴らしいと思います。

しかし、それ以外の方が、せっかく自分が創り上げるマジックなのに、「オリーブ~」を使うのはもったいないと思います。もし仮に音楽にこだわりがないとしても、「オリーブ~」以外の曲を選ぶべきです。「オリーブ~」は無難どころか、イメージが強すぎて、ほとんどのマジシャンにとってはノイズとなり、ご自身のイメージを表現する妨げにすらなると思います。

同様にシルクハットも、余程クラシカルな世界を表現したいのでなければ、ただ先人のイメージをお借りしているだけになってしまうのです。

機能性、合理性

トップハットをひっくり返してテーブルに置き、ステージ上での小道具入れに使うマジシャンは多いですが、その用途に関しても、ハットはそれほど便利な代物ではないと思います。例えば縦につぶして簡単ににたためるオペラハットタイプのものは持ち運びに便利だという人もいますが、本当でしょうか?仮にたたむことのできない箱を使ったとしても、その中に衣装や道具を入れて持ち運ぶことができますので、実はそれほどかさばりません。ところがオペラハットはつぶしてもそれなりに厚みと直径があり、たたんだ状態で無理な力がかからないよう気を使わなくてはいけません。

また、道具入れとしてみても、トップハットやオペラハットは、つばを含めたボリュームがあるわりには、楕円形であることが災いして、収納力が乏しいです。基本的には四角形の方が道具入れとしては便利です。

また、蓋がないというのも気になります。トップハットに道具を入れてその辺に置いておくと、のぞき込まれてしまったりという危険もあります。

代案は?

散々トップハットのデメリットを挙げてしまいましたが、実は私自身もトップハットを道具入れに使っていたことがあります。しかし、徐々に考え方をアップデートしていき、上記の結論に達しました。

しかし、シルクハットを使わないとなると、代わりに何を使えばよいでしょうか?もちろん、信頼できる方に演技を見せて、アドバイスをもらえれば良いのですが、基本的にはその人の衣装、演目、雰囲気、性別、年齢、世界観などを総合的に考え、悩み、決めていくしかありません。しかし、いくつかヒントとなる事柄があります。

もしハットを道具入れにするなら、衣装に合ったハットを選んではどうでしょうか?例えばスーツやタキシード系の衣装の場合、シルクハットではなく、フェドーラ(ソフト帽、中折れ帽)にするのです。

また、ハット以外の箱や鞄にするなら、自分に合った、お洒落なものを選びます。どうしても思いつかなければ、あなたがお洒落だと思う場所に行って観察するのも良いと思います。例えばお洒落なホテルやバー、レストランに行って、小物や備品類をどうやって収納しているか見てみるのです。もちろんあなたがお洒落で格好良いと思う洋服屋や雑貨屋でもよく、ヒントとなる品はきっとたくさんあるはずです。

この記事がマジシャンのシルクハット卒業の一助となれば幸いです。

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