マジックをやっていない人にとっては訳の分からないタイトルですが、マジシャンにとってはわかりやすい表現です。
アマチュアマジシャンの方は、初心者、ベテラン問わず、私にとっては思いもよらなかったアイディアを提供してくれることがあります。今回はそれが標題のマジックでした。
スリーカードモンテとは、古くからあるゲームの一種で、ディーラー(親)が1枚の当たりカード(例えばハートのクイーン)と2枚の外れカード(例えばスペードの2とクラブの2)をシャッフルして並べ、プレイヤー(客)が当たりを選べばプレイヤーの勝ち、外せばディーラーの勝ち、という原始的なギャンブルです。
ただし歴史的にスリーカードモンテは純粋なゲームではなく、欧米のストリートでゲリラ的におこなわれたイカサマギャンブルです。ディーラーはインチキをして必ず外れを選ばせたり、わざと少額で勝たせた後に高額を賭けさせてお金を巻き上げたりします。
もちろん違法なので現在では下火ですが、マジックの世界ではイカサマのデモンストレーションとして今でも人気のあるテーマです。実際にお金を賭けることなく、マジックとして演じる分にはもちろん合法です。
通常のスリーカードモンテは小さなテーブルや台の上で普通のトランプを3枚使って演じますが、ステージやパーラーで演じるマジシャンはジャンボサイズやマンモスサイズと呼ばれる大きなトランプを使ったりします。これにより、見やすいだけでなく、カードをすり替えたりできないという口実にもなります。
また、元来は純粋なテクニックのみによってカードをすり替えていたのですが、多くのマジシャンが仕掛け(ギミック)も考えました。
さて、ここでタイトルに戻るのですが、私の教室の受講者の方の一人が、以前ボランティアなどでノーギミック、ノーエキストラで3枚のジャンボカードのみを使ってスリーカードモンテを演じたと仰いました。
これは私にとってはかなり衝撃で、パーラーのスリーカードモンテは多少のギミックを使うのが当たり前で、純粋なスリーカードモンテだとオチが付けづらく、パーラーで演じるのは難しいと思っていました。実際、そのときに軽く手順も見せていただきましたが、テクニックの偏りと、同一現象の繰り返しが多く、私にとっては合格点には至らない手順でした。また、最大の問題点はお客さんが常に不正解を選ばされ、お金を賭けていないとはいえ、悔しい思いをし続ける点です。
しかし、ノーギミック、ノーエキストラのジャンボカードでスリーカードモンテを演じるというテーマ自体は非常に面白いと思いました。ギミックやエキストラがない分、現象の鮮やかさは減りますが、より自然でラフにカードを扱えるのは利点です。また、たった3枚といえど使えるテクニックは意外にたくさんあり、思ったよりも多くの現象が起こせそうだとも思いました。
また、お客さんが被害者になる問題は、演出やセリフ次第でいかようにも回避できそうです。手順自体も長すぎると飽きてきますので、現象に少しずつバラエティをもたせながら3~4段くらいの構成で、時間にするとセリフや説明込みで3~4分くらいがちょうど良さそうです。逆に3枚のジャンボカードだけで、3分見せられたら立派な演目だと思います。
早速、テーマのみを借用し、テクニックも構成も全て作り変えたダーク和秋バージョンも作りましたが、まだどこかで演じてはいません。該当の受講者さんが気に入ればお教えして演じていただいても良いかと思っています。