最近一番面白かったマジック本

今回は最近読んだマジックの本で一番面白かった(参考になった)本をご紹介します。

ダニ・ダオルティス著、谷口和巌・滝沢敦訳、「トラバハンド・エン・カサ」です。

この本は2015年にスペイン語で書かれ、2018年に日本語訳が発行されました。

本といっても日本語で製本されたものはなかったので、PDF版を読みました。

実はこれまで、ダニ・ダオルティスさんについて、あまり詳しく知らず、キャラクター的にも自分と遠いため、今頃になって読んだというわけです。

私がなぜこの本に感動したのかというと、私が長年クロースアップ・マジックに対して抱いていた悩みを解決する指針を示してくれたからです。

私のクロースアップに対する悩みはまさにクロースアップの根幹に関わるものでした。

クロースアップ・マジックとはステージ・マジックと対極にあり、近くで少人数に見せるものです。

しかし、少人数にしか見せられないということは、多くのお客様にマジックを見せたい場合は、演じる回数を増やす、例えばテーブルホッピングのようにたくさんのテーブルを回るしかありません。

これが2~3テーブルならまだ良いですが、10テーブルともなると、なかなか大変です。

そして、回数が増えれば増えるほど1回当たりの時間を短くする必要も出てきます。

また、お客様が2名とか4名とかの典型的なクロースアップの場合、どうしてもテーブルごとのムラができてしまいます。

すなわち、あるグループでは物凄く盛り上がったけど、あるグループではそうでもなかった、ということが起きやすくなります。

その点、ステージマジックでは、お客様の人数が多いので、多くの人が盛り上がれば、それが会場全体に波及して全体が盛り上がるという効果が期待できます。

このような点から、私はクロースアップも嫌いではないものの、やっぱりステージかパーラーが好きだなと思っていたのです。(大きすぎるステージはまた別の問題が発生するので、私が一番好きなのはパーラー(中規模)ショーです。)

ここからがトラバハンド・エン・カサの内容なのですが、この本は一言でいえば、クロースアップ・ショーのやり方を解説した本なのです。

典型的なクロースアップ・マジックと違い、クロースアップ・ショーなら一度に大人数(ダオルティスによると40人以上!)に見せられ、クロースアップの良さを損なうこともありません。

この本には、マジックのやり方は一つも書いてありませんが、会場の設営方法から、ショーの運営まで説明されているのです。

私にとってはクロースアップ・マジックのひとつの理想形が示されたように感じました。

逆にいうとテーブルホッピングが好きな方や、本当に少人数相手のクロースアップが好きだという方には、あまり興味がない内容かもしれません。

他にも、プロジェクターを使ったショーの工夫や、マジックの創作や構成、演技に関する理論も多く語られており、これらも長期的に見たときに非常に有益な内容が多くありました。

この本の内容をゆっくり咀嚼して、少しずつ自分のものにできたとき、一回り成長できる、そんな本だと思いました。

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