ワークショップという言葉には幅広い意味がありますが、この場合、実技・体験型の講座という意味で話を進めます。
種明かしは「どうやってその不思議を起こしたのか」という一点の興味にのみ応えるものです。もちろん、そのマジックを実際に再現したり、演じたりすることは度外視になります。極端な場合、見た人がわかった気になれば良いというものです。
しかし、マジックの体験、習得を目指したワークショップの場合、種を教える以外に、膨大な周辺知識を解説することになります。
例えば、まずそのマジックをどうやって始めたらいいか。何と言って説明し、道具はどこにしまっておけば良いか。道具はどうやって調達すればよいか。道具の持ち方は?言ってはいけないセリフは?終わった後はどうすればよいか?
マジックを演じるには越えなくてはいけないハードルがたくさんあり、種を知っているだけでは到底演じることができません。しかしそこが面白いところでもあります。サッカーでいえば、種明かしは「ボールを蹴ってゴールに入れればよい」という説明になりますが、ワークショップとなれば、ドリブル、パス、シュートなどの練習が必要で、それでも実際に試合でゴールすることは簡単ではありません。
また、種明かしはできるだけ簡潔にする必要があります。実際には難しくても、さも簡単そうに説明しないと、見た人がわかった気になってくれません。
一方、ワークショップではマジックが簡単だと思われては困ります。それだといざ演じるときに必ず失敗するからです。マジックはよくよく注意しないと失敗したり、種がばれてしまうということを理解してもらうのが大切です。一見簡単に見えるマジックでもたくさんのコツがあり、マジシャンはありとあらゆる方法で種をカバーしているのです。
私はワークショップを受けた方が、その場限りで終わってしまうのではなく、自分でも練習して実際に演じてみてほしいと思っています。また、「一芸は万芸に通ず」の言葉通り、マジックの理論やプレゼンテーションが、マジック以外の勉強や仕事にも役立てば最高だと思っています。