バニッシングケーンのカット

今回はステージネタですが、クロースアップ専門の方にも興味をもっていただけたら嬉しく思います。

消失するステッキ、通称バニッシングケーンというマジックがあります。これに使う道具はファンタシオというマジシャンがつくっていたものが有名で、「ファンタシオ製」などと言っていました。しかしファンタシオ自身も高齢で亡くなってしまい、ファンタシオ製の道具も最近は手に入りづらくなっています。その代わりにファンタシオ製と同様のものが、主に台湾や韓国などで作られており、値段も安くなっています。

普通は後発品というのは、先発品を参考にして作るので、様々な部分で改良、改善の余地があり、質が良くなるはずですが、奇妙なことに、後発品であるはずのアジア製が先発のファンタシオを越えられていないと言われており、実際私もそう感じています。

その原因は、個人的には、技術的な問題ではなく、道具への理解度、そしてマジックへの理解度なのではないかと思います。つまり、ファンタシオは本当に天才的なマジシャンで、自分のプロデュースする道具、マジックに関して、完全に知り尽くし、素材や形状、構造のすべてにおいて完璧にこだわりぬいていたのではないかと思うのです。後発品を作っているメーカーの方も決して悪くはないのですが、残念ながらファンタシオの研究量、知識量に追い付いていません。

ただし、アジア製のケーンがファンタシオ製に追い付いていないというだけで、使い物にならないとまでは思っていません。実際、今私の手元にあるケーンもアジア製のものです。

キャップを見ると謎の「m」という文字があるのですが、これだけではどこで誰が作っているものだかわかりません(笑)。

このケーンは異様にキャップが外れやすく、使えないとまでは言わないものの、実践的には不安が残るものでした。そしてよく観察して原因を調べたところ、端のカットの角度が急すぎて、キャップのはまりが浅く、不安定になっていることがわかりました。

そこで画像のように金尺とカッターナイフでほんのわずかですが角度が浅くなるようにカットしたところ、見違えるように安定し、十分実用に耐えるものになりました。どこをどれだけ切れば良いのかをここで示すことはできません。それは企業秘密というより、個体差が大きく、まずは浅めに切っておいて様子を見て、まだだめならもう少し深く切ってみるなどしないといけないからです。

私がこの記事で伝えたいのは、マジックの道具は買えばよいというものではなく、もし気に入らなければ自分で適宜創意工夫しなければいけないということです。これは製品が不十分だということではなく、自分の理想的なマジックを追及する上で必要なことで、こんなちっぽけなことでも大切なことだと思います。

ちなみにファンタシオ自身も、自分がプロデュースする道具の改造・加工方法を数多く考案して発表しています。一見完璧に見えるファンタシオのケーンも使い方によっては加工が必要で、マジックの道具に完成は無いということです。

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