前回に続き、マジックに使うコインの話です。日本円ならその場で誰かに借りて演じればよいのですが、外国のコインを自前で用意する場合はどんなコインを選べばよいでしょうか?そしてチャイニーズコインとは?
ハーフダラーVSワンダラー
マジシャンによく使われるのはアメリカの50セントコイン(以下ハーフダラー)と1ドルコイン(以下ワンダラー)です。そして私のおすすめはハーフダラーです。その理由をいくつか挙げてみましょう。
理由1 値段
コインは小さいものなので、絶対に失くさないとも限りません。あまりに価値が高いコインだとキズが付くのが嫌で練習しづらくなったり、失くしたときのショックが大きくなります。それでは本末転倒なので、人によって金銭感覚は違いますが、私の感覚では1枚1,000円以下のコインが良いのではないかと思っています。そのため、値段の安さからもハーフダラーに軍配が上がります。(ちなみにハーフダラーは日本では50セントでは買えません。1枚300~500円程度します。)
理由2 技法の完遂
各人のクセや手の大きさ、技法の種類によって異なりますが、ざっくりといって、ワンダラーの方がハーフダラーよりも技法を「ただ単にこなす」だけなら簡単な場合が多くあります。しかし、実演に耐えうる精度で「きちんとこなす」のはハーフダラーの方が有利なことが多いです。私を含め、人は誰でも自分に甘い生き物ですから(笑)、ワンダラーでできた気になるよりも、ハーフダラーでより高い完成度に仕上げる方が価値が高いと思います。(もちろんストイックな方はワンダラーもおすすめです。)
理由3 イングリッシュペニーの存在
コインの出現、消失、移動、貫通等は1種類のコインで演じることができますが、変化現象を演じる場合、別のコインが必要になります。その点、ハーフダラーならイングリッシュペニーというほぼ同じサイズの銅貨があるので、その点が有利です。ワンダラーの場合はチャイニーズコイン(後述)に頼ることになります。
以上の理由で、総合的にはハーフダラーでよいのではないかと思っています。さて、ハーフダラーやワンダラーは見慣れないといっても歴とした貨幣ですが、さらにインチキ臭いのがチャイニーズコインです。
チャイニーズコインとは?
チャイニーズコインはマジック用に作られた、昔の中国のコインを模したメダルのようなもので、もちろん流通したことはありません。もしかしたら欧米人にとっては中国のコインに見えるのかもしれませんが、同じアジア人からするとさすがに無理があるデザインが多いです。実際に中国人の方にこのコインを見せたら、「今も昔も中国にこんなコインはない」と言われてしまいそうです。
しかし、そんなチャイニーズコインも、使い方次第だと思います。ただ単に「チャイニーズコイン」とか「中国のコイン」と呼ぶのに無理があるだけで、それこそ「魔法のコイン」としては雰囲気たっぷりです。
また、チャイニーズコインのバリエーションとして、「和同開珎」もあります。これはジャパニーズコインですが、これなら「昔の日本の和同開珎のレプリカ」などと呼んでも違和感はありません(ただし本物の和同開珎はもう少し小さいのですが)。
実際にチャイニーズコインを購入する場合も、値段とデザインを見て気に入ったものを選ぶのが良いと思いますが、個人的にはマジックランド製の和同開珎が、リーズナブルで品質もよく、おすすめです(当たり前ですが、チャイニーズコイン系はコインではないのでマジックショップでしか買えません)。
以上、マジックに使うコインの紹介でした。マジックにおいて、自然さは大切ですが、最重要ではありません。芸能芸術としてトータルで考えて選択することができればよいのではないかと思います。