カップ&ボール ダイ・バーノンの手順考察

カップ&ボールはダイ・バーノン氏の手順が最も有名で、様々な文献や映像でも語りつくされていますが、私なりの認識、解釈であらためて考察していきたいと思います。

ダイ・バーノンの手順を知らない方は「dai vernon cups and balls」などと検索すればたくさん情報が出てくると思いますが、実はバーノン自身もマイナーチェンジを繰り返しており、複数のバリエーションがあります。しかし大筋は変わりませんので、ここでは「THE DAI VERNON BOOK OF MAGIC」に解説されている手順を基に考察したいと思います。バーノンの手順は次に紹介するように全部で5つのステップからなります。

1.道具の紹介

まずは導入として、使う道具の紹介をします。3つのカップと魔法の棒(ウォンド)、最後に3つのボールを紹介しますが、途中でカップがカップを貫通したり、ウォンドが貫通したりと、ちょっとしたマジックをはさみつつ道具の説明をします。ここを比較的ゆったり、たっぷり見せるのがバーノンの特徴で、非常に理にかなった見せ方です。

というのも、マジシャンにとっては当たり前である、カップは3つであり、ボールも同じく3つであるということを十分強調しておかなければ、この後のマジックの不思議さが半減してしまうからです。かといって声高に「3つですよ!3つですよ!」と言うのはいかにも間抜けです。だからこそ、バーノンのやり方はスマートに道具を印象付けることができているのです。

また、バーノンは3つのボールを普通にポケットから出してくるのですが、バーノン以外のカップ&ボールの手順では、まず最初にマジックによって3つのボールを出現させるところから始まるパターンも多くあります。特にマイケル・アマー氏の最初のボールの出現は惚れ惚れするほど構成もテクニックも素晴らしく、多くのマジシャンがあこがれるのですが、バーノンの意図とは少し異なるということは頭に入れておきたいところです。「無」の状態から次々とボールを出現させていくのは、それはそれですごいマジックなのですが、最初から最後までボールは3つである、という印象が希薄になってしまうからです。

2.消失&出現

ウォンドで魔法をかけると、ボールがひとつずつ消えていき、伏せてあった3つのカップからそれぞれ出てきます。

まず大前提として、バーノンの手順は難しいです。そしてその中でも特に難しいパートのひとつがここです。この上なく不思議で美しい現象なのですが、まだ手順の前半でこの難易度では、習得を諦める人が出てきてもおかしくありません(笑)。

3.移動

カップからカップへボールが移動します。実はこのパートはそこまで難しくなく、マジシャンとしては一息つけるところです。あまり高難度の技が連続するのは良い構成ではありません。

4.集合

ひとつのカップに3つのボールが集合してしまいます。

5.ポケットからカップへの移動、そして…

ポケットに入れたボールが次々とカップに戻り、そのままクライマックスに突入する、やや目まぐるしい現象です。実はこの辺は(おそらくどんなに上手い人が演じようとも)お客さんによっては現象を追いきれなくなってきている可能性があり、演じる側もきついのですが、大切なのはせめて演者だけは完璧に流れを覚えて迷いなく演じることです。そうすればお客さんはなんとなくでもついてくることはできます。

ところで、このパートでは軽い種明かしが含まれているので有名です。しかし、バーノンの手順を練習したことがある人ならお分かりのように、この部分は種明かしなしでもそのまま演じることができてしまいます。そのため、人によっては種明かしなしで演じた方が良いと考える人もいます。実は私自身も何度か意見が変わっているのですが、少なくとも今現在はバーノンと同じく種明かしは必要なのではないかと思っています。それはもちろんクライマックスのためのミスディレクションを強めるためです。

それでも種明かしの加減は重要で、あくまで軽く説明する程度が得策です。そもそも、この段階においては、お客さんは現象を追うだけで精一杯で、種を知りたいという欲求はそこまで強くありません(逆に種を考えさせないために立て続けに現象を起こしているとも言えます)。あまり詳しく種を説明するのは、ただでさえ混乱しているところに追い打ちをかけるかのようになってしまいますので、あくまで種明かしは軽く、ということです。

さいごに

マジックの世界では、「カップ&ボールはバーノンのものが基本手順」というような風潮がある気がしているのですが、どちらかというと「バーノンの手順が最高峰」と考えた方がちょうど良いと思っています。少なくともバーノンの手順よりも大幅に難易度を上げてしまうと、通常の場合、それはそれは危なっかしく、観ていられないような状態になってしまうと思います。例えば、撮り直しがきく映像での演技なら可能かもしれませんが、対人で安定して演じるためには、難易度はバーノンの手順くらいが限界かなと思うのです。

というわけで、難しくとも、よくできていて、やりがいのあるバーノンのカップ&ボールに取り組んでいる方や、これから勉強してみたいと思っている方の参考になれば幸いです。

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