ゾンビボールとフローティングテーブルを比較・考察!

ステージで大きな物を浮かせるマジックはインパクトがあって憧れますが、その代表格といえる2つのマジックを比較・考察します。

ゾンビボールは直径10センチほどの金属のボールに布をかけると浮かぶマジック、フローティングテーブルはクロスがかかった小さなサイドテーブルが浮かぶマジックです。どちらも類似のマジックですが、最近、プロマジシャンが良く演じるのはフローティングテーブルであり、ゾンビはあまり演じられなくなってしまいました(アマチュアではゾンビボールも演じられています)。

最も大きな理由は、お洒落なサイドテーブルと謎の鉄球という違いです。マジックはどうしてもお客様により馴染みのあるものを使った方が効果が高まります。その点、ゾンビボールは見たことも触ったこともない鉄球というのが弱点になります。もちろん、謎の鉄球に理由付け、物語設定をして興味を増す演出を加えれば、必ずしも劣るわけではありませんが、普通に演じただけでは絶対にテーブルに勝つことはできません。

2つ目はギミックの安全性です。フローティングテーブルは通常、種が見えることはほとんどありませんが、ゾンビボールは危険な個所がいくつもあります。少しでも油断すると種が見えてしまう上に、角度にも弱いです。きちんとしたステージの発表会ならともかく、過酷な現場では実質的にフローティングテーブルしか演じられません。

ゾンビボールの方が道具がかさばらないのではないか、と思われるかもしれませんが、そんなこともないのが泣き所です。ゾンビボールをステージに置いておくためのテーブル、最後に消す場合は捨て場などが必要となり、フローティングテーブル以上の設備が必要です。

これではプロマジシャンはフローティングテーブルしか演じなくなってしまいます。ただし、フローティングテーブルにもデメリットがないわけではありません。まずは値段が高いのが一番のネックです。

フローティングテーブルはロザンダーというマジシャンが製造・販売しているものが正規品とされており、作りも美しいのですが、値段も大変高くなっています。最近のマジックショップでは廉価版もありますが、ロザンダー製以外はコピー品といわれます。しかしここが微妙なところで、そもそもフローティングテーブルはゾンビボールや、トミーワンダーの鳥かごとほぼ同じ種なのに、どこまでオリジナリティを認めるかです。少なくともコピー品が違法とまでは言えないと思われますが、ロザンダーが好きで、ロザンダーを尊重する方は正規品にした方が良いと思います。

2つ目のデメリットはあまりに氾濫してしまったことです。あまりに多くのマジシャンが演じたことで、少なくとも珍しいマジックではなくなりました。また、いくら種が見えないからといって技術が未熟なマジシャンが演じると、腕とテーブルが連動してしまって、きちんと不思議な浮き方をしません。もちろん、ロザンダー本人を含む上手なマジシャンが演じれば素晴らしいマジックに違いないのですが、腕のあるマジシャンがあえて演じたいマジックでもなくなってしまったのも事実です。

また、フローティングテーブルは対象が大きい分、浮き方がややワンパターンです。その点、ゾンビボールの方がマジシャンの技術によって様々な浮き方、動きがあるので、軍配が上がります。アマチュアマジシャンにとって稽古しがいがあり、プロマジシャンが腕を見せやすいのがゾンビボールです。

さて、いろいろ語ったところで私はどちらを演じるかと言われたら、実は現在のところ、どちらもレパートリーになっていません。ゾンビは演じたことがありますが、レギュラー入りはしなかったのです。ただ、何かきっかけがあればまた取り組んでみたいマジックのひとつです。

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