書評「デビッド・カッパーフィールド マジックの歴史」

マジックの本を読んでこれほど感動したのは久しぶりかもしれません。今年最後のブログはこの本の紹介です。

この本は世界的なイリュージョニストであるデビッド・カッパーフィールド氏の博物館に所蔵される膨大な資料と収蔵品をもとに、たくさんの伝説的なマジシャン達の歴史を追う内容となっています。Amazonから目次を見るだけでもこの本がどんなにすごい本かがわかります。

通常のマジックの本とは異なり、マジックそのものやり方の解説はありません。しかし、自分のオリジナルのマジックや演技を創り上げたい人にとって、これほどインスピレーションが湧き、刺激を受ける本もありません。また、デビッド氏を含む4人の共著者の方々のロマンあふれる文章も素晴らしく、読み物としても面白くなっています。

また、訳者の宮中桂愌氏の訳文は少し硬い表現や不自然な文体、直訳的な文章が散見され、人によってはいわゆるこなれた文章になっていないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。ただ、個人的には英文の味が残っている感じがして、これはこれで良いと思いました。

分厚く、ボリュームのある本に見えますが、細かな章に分かれていることと、美しい写真が多く掲載されていることで、非常に読みやすくなっています。

全体を通して、マジシャン達のマジックに対する執念の凄まじさを感じます。また、不遇の幼少期を過ごした者も多く、それが人生の発条になっているようにも感じました。

技術書ではないため、マジックを全くやらない人にとっても興味深く読める一方、マジシャンにとっては一般教養として必読の書でもあると思います。

アマチュアマジシャンの中には、マジシャンの人名に対する興味が非常に薄い人がいます。しかし、どんなマジックも誰かが考えたから存在しているのです。

数学の教科書には必ず誰々の定理、誰々の公式というように、人名がセットになっています。ピアノを弾く人はそれがベートーベンの曲だと知らずに弾く人はいません。同様に、レベルの高いマジシャンになって、レベルの高いマジックを演じるためには、マジシャンの名前を覚えることが不可欠だと思います。

科学、哲学、文学、芸術、あらゆるジャンルは歴史の積み重ねの上に存在しています。だから歴史を学ぶことに価値があるです。

デビッド・カッパーフィールド氏は本書の中で、アイザック・ニュートンの言葉を引用しています。

“巨人の肩の上に立っていたからこそ、ここまで見通すことができた”

先人の業績があったからこそ、私たちはその先に進むことができるという意味です。ぜひ、マジックの歴史に興味をもち、偉大な先人たちに敬意を払って前へ進んでいきましょう。

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