ロープマジック 序論

ついにロープマジックの記事です。

初めてクロースアップに取り組むならおすすめはカードですが、パーラー、ステージだと見せ方が少し難しくなります。スペード(♠)とクラブ(♣)の区別がつかないくらい距離が離れていると、カードマジックは効果が減ることが多いですし、テーブルなどに置くと、カードは平面になってしまって、観客の視線によっては見えづらくなります。そのため、細かな気遣いが必要になります。

そこで、初めてステージ、パーラーマジックに取り組む場合は、私はロープをおすすめしています。初期投資が比較的安く、遠くから見え、適度な複雑さがあるので種もカバーされるからです。この「適度な複雑さ」というのがわかりにくいかもしれませんが、大切なことです。

例えば、初心者の方が「物が浮かぶマジック」をやりたいと思ったとしましょう。物が浮くなら、遠くからも見えるし、絶対に不思議で盛り上がるだろうということです。物が浮くのはこれ以上ない単純な現象であり、マジックは単純なら単純なほど良いというのは絶対的な真理です。ぜひその感覚はずっと持ち続けてほしいと思っています。

しかし、マジックは単純なら単純なほど難しいというのもまた事実です。特に物を浮かせる場合、ほとんどの観客は糸で釣っているか、何かで支えているのだろうと考え、実際にその通りであることが多いのです。つまり観客は非常に選択肢の少ない状態で推理できるので、正解にたどり着きやすいのです。これが単純なマジックの難しさです。

ロープマジックの現象は数多くありますが、例えば「はさみで切って元通りにつなぐ」「長さが伸び縮みする」「結び目が移動する」など、浮揚現象ほど単純ではありませんが、カードマジックほど複雑ではありません。選んだカードを覚えておく、枚数を数えるなどの負担がないからです。これが私の考える適度な複雑さです。

また、マジックによっては横や後ろから見られてはまずいものもありますが、ロープマジックはきちんと練習すれば、比較的角度に強いものが多いのも魅力です。そのため、予備のトリックとしても非常に強い味方になります。

さて、ロープマジックは素晴らしいと書いてきましたが、欠点もあります。そのひとつはカードマジックよりは独学しづらい点です。カードマジックなら、手元がきちんとできていれば何とかなりそうなものなのですが、ロープはたいてい1メートル以上あることが多いため、両腕を大きく使うことになります。そうすると演者の目線はどこを見るべきか、身体の動かし方が不自然でないか、などの問題が生じます。これを自分で調整するのは難しく、本やDVDではフィードバックができません。そのため、マジックの上手い人に見せてアドバイスをもらうか、完全に独学の場合は動画に撮ってチェックするなど、慎重な練習が必要になります。

また、ロープは柔らかいので、演者にとって予想外の動きをする場合があり、それを完全にコントロールして自在に扱うには、カードやコインとは違う難しさがあります。それを解決するには、ハンドリング(道具の操作)をよくチェックして、何度やってもロープが同じ動きをするように練習することです。

ロープマジックは本来わかりやすいマジックのはずですが、演者の目線や身体の動き、ハンドリングが滅茶苦茶だと、「適度な複雑さ」ではなく、とんでもなく複雑で意味不明、完全なるカオスとなってしまいます(笑)。やはり練習しかありませんが、単純に回数をこなすというよりも、正しい動きと意識で練習をしないといけないので、頭と身体を存分に使います。少しずつできるようになっていくと、練習自体も楽しく、やりがいのあるものになると思います。

さて、私も一押しのロープマジックについて、使うロープや、おすすめの本、練習方法など、今後さらに詳しく書いていきたいと思います。

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