スペルバウンド徹底考察!

コインマジックの王道スペルバウンドとは一体何なのか?なぜレパートリーにする人が少ないのか?どんな見せ方が良いのか?など考察します。すでに取り組んでいる方も、これからコインマジックを志す方もぜひご覧ください。

スペルバウンドとは?

スペルバウンド(spellbound)とは英語で「魔法にかかった」という意味ですが、マジックの世界ではコインが変化するマジック全般を指す用語です。銀貨が銅貨に変わったり、真鍮貨に変わったりします。

なぜレパートリーにする人が少ないのか?

スペルバウンドはコインマジックの代表的な作品でありながら、レパートリーにしているマジシャンは少ないと思います。特にレクチャープロや、動画活動をメインにしているマジシャンを除くと、非常に少ないと思います。これはスペルバウンドがいくつかの問題を抱えているからだと思われます。

今からスペルバウンドの見せ方、演出例とともに問題を探っていこうと思います。

錬金術の演出

そもそもたった一枚の小さなコインの種類が変わるだけで「スペルバウンド」とはずいぶん大仰な名前です。これはおそらく錬金術のイメージからきているのではないでしょうか?そもそもコインの種類を変化させる動機はたった一つで、価値の低いコインをより高価なコインに変えることです。例えば銅貨を銀貨、金貨に、10円玉を100円や500円に、などです。

このような錬金術演出の場合、変化は一回のみとするべきです。通常のスペルバウンド手順のように何度も何度も銀貨と銅貨を行ったり来たりさせてしまうと、本来の目的を見失ってしまい、錬金術演出が成り立たなくなってしまいます。

たった一回、10円玉を100円玉に変えるだけでも、実はそれなりにインパクトのあるマジックです。ただし、問題点としては、お客様に「私の10円玉も100円に変えてよ」と言われてしまうリスクがあります。また、金額だけを見たなら千円札を一万円に変えるマジックの方がインパクトがありそうです。実際お札のチェンジは多くのプロマジシャンがレパートリーにしています。

では、銅貨を銀貨に変えるのはどうでしょうか?実はこれも中途半端なマジックです。最初に見せた銅貨と全く同じデザインの銀貨に変わるならまだしも、デザインも国籍も年号も違うコインに変わってしまったら、錬金術というよりコインそのものがすり替わったとしか思えません。

スペルバウンドの錬金術演出は意外と難しいことがわかります。

マニピュレーション演出

錬金術のイメージを前面には出さず、あくまでマジシャンが巧みにコインを操作(マニピュレーション)するのを見せる演出も考えられます。これは動画にも向いた見せ方で、見た人は当然コインを2枚使っているのだろうと思うのですが、とてもそうは思えないくらい巧みにすり替えることでマジシャンの技術に対して価値を見出すタイプの演出です。

おそらくこれは現在のスペルバウンドの主流の見せ方だと思います。ただし、マジシャンによる「どうだ、上手いだろう」という感じが嫌味にならないように気を付ける必要があります。

マニピュレーション演出の場合、使うコインは日本円よりも大きくて見栄えのするハーフダラーやワンダラーサイズが良いと思いますが、ここでもちょっと問題があります。観客からすると、よく知らないアメリカの銀貨が、そもそもコインですらないチャイニーズコインに変わったところで、不思議ではあるものの、日本円に比べると弱い感じがします。正直なところ、実践的にはマジシャンが数秒間、手先が器用なところを見せて「はい、おわり」という感じになりがちです。

じゃあそもそもその数秒間は必要だったのか、あくまで前座芸なら、前座芸なんてやらずにすぐに本編のマジックをやった方が良かったのではないか、という感じもします。また、オチをつけるためにジャンボコインを出す方法もありますが、そうなるとジャンボコインの印象が強すぎてスペルバウンドの味が消えてしまいます。

また、ワンダラーサイズを使った場合、角度の弱さも欠点です。動画なら気になりませんが、実践的には使う技法の種類も含めて十分吟味する必要があります。

スペルバウンドの道は?

ここまで書いて、スペルバウンドの難しさもわかっていただけたと思いますが、とはいえ、実演不可能なマジックというわけではありません。私なりにスペルバウンドを生かす道を考えるといくつかのポイントがあります。

①それなりに整った環境が向いている。例えばテーブルホッピングよりはクロースアップショーなど。プライベートの飲み会など、過酷な環境では厳しい。

②台本を丁寧に作る。シンプルなマジックでもセリフを予め考えておかないと、本番でちっとも言葉が出てこないことになります。

③トリネタよりはオープナー。スペルバウンドを最後の演目に持ってくるのは難しいのでオープナー(最初)、または合間の演目として、さらっと見せれば十分成立すると思います。

④技法・手法の吟味。いかにマジシャンにとって魅力的な技法でも角度に弱かったり、安定感に欠けるなら考え直した方が良く、スムーズで怪しくなく、フラッシュしないハンドリングで構成しましょう。

私が以前投稿した動画も貼り付けておきますので、こちらも参考にしていただけたらと思います。

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