「松旭斎天一・天勝・天二 三枚看板トリビュート公演」レビュー

久しぶりに観客としてマジックショーを見てきましたので、その感想です。

今回の公演は明治から昭和にかけて活躍した3人の奇術師をテーマとしています。構成としてはMCをふしぎ良さんが担当し、天一をパピヨン大西さん、天勝を葉月美香さん、天二を北見翼さんが演じて、ゲスト的に藤山大樹さんとMASAKIさんが入るという感じでした。

個人的には、どのくらい天一、天勝、天二を再現するんだろうという点が気になっていました。明治時代のマジックショーを再現というのはかなり困難ですが、面白そうです。

MCの後、最初に登場したのは葉月さん扮する天勝でした。葉月さんはベリーダンサーでもあるため、踊りはベリーダンスを基にしているようでした。本当の天勝がベリーダンスを踊っていたかはさておき、雰囲気は非常に出ており、一目でイメージが伝わったため、葉月さんがトップバッターなのは納得でした。

二番目は翼さん扮する天二で、内容は燕尾服を着てのスライハンドでした。本物の天二は技巧派ですがショーマンとしてはやや地味な人物だったそうです。翼さんの演技も決して派手な衣装ではなく、また演技の味付けもおとなしめで、本物の天二もこんな感じだったのかな、と思わせるものでした。

三番目はパピヨンさん扮する天一です。はっきり言って天一の再現は絶対に不可能だろうと思っていました。例えば天勝の場合、「美人」「踊り」「メイク」などのキーワードがあるため、再現の方向性はわかりやすいと思います。天二も正装で正統的なスライハンドを演じればよいため、現代のマジシャンにとってはやはり再現しやすそうです。

本物の天一は威風堂々とした風格で、明治の名士といった雰囲気だったそうです。しゃべり方も厳かで、格調高いイメージです。しかしパピヨンさんはどちらかというと気さくで軽いタッチの芸風でした。偉ぶった感じはほとんどありません。

とはいえ私には天一を再現できるマジシャンが現代の日本で思い浮かびません。しいていえばマジシャンではなく、俳優さんにイメージなどを伝えて演じてもらうのが一番雰囲気が出るかもしれません。逆に言うと天一はそれだけ偉大なマジシャンで、簡単にまねできるような人物ではないのでしょう。

大樹さんはゲスト的な扱いで誰かを演じるわけではなく、通常の手妻を演じました。安定感もあり、最後は大きな道具も出るので、わかりやすく、プロらしさを感じました。

最後に登場したMASAKIさんもやはりゲスト的な扱いで、通常のイリュージョンを演じました。天一といえば、イリュージョンですが、MASAKIさんを除くとイリュージョンは少なめだったため、今回の公演に不可欠のゲストだったと思います。

通常、このようなショーの場合、各マジシャンがバラバラに、順番に演じるというものが多い中、 今回はケン正木さんの構成、演出による、非常に意欲的な試みだったと思います。 令和の時代に明治の雰囲気を醸し出すのはとても難しいと思いますし、予算や準備期間などの制限もありますので、限界はあります。そんな中、三枚看板というテーマをもって構成したのは大変良かったと思います。

個人的な願望としては、実現可能性はさておき、本当の天一一座の公演を再現した公演も見てみたいと思いました。最悪、不可能な演目はナレーションで「ここで〇〇という演目が行われました。これこれこういう現象で、演技時間は約何分ですが、今回は割愛します」などとしても良いかと思います。天一一座の世界を客席からイメージしてみたいのです。マニアックすぎるでしょうか?

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