サーストンの3原則再考②「同じマジックを2度繰り返してはいけない」について

前回に続きサーストンの3原則について、今回は「同じマジックを2度繰り返してはいけない」を扱います。

例外

このルールはちょっと考えただけでいくらでも例外が思いつきます。お客さんがサインしたカードが何度も一番上に上がってくる『アンビシャス・カード』や、2枚のハンカチを何度結んでもその度にほどけてしまう『スライディーニのノッティッド・シルク』などなどです。これらのマジックは3原則に反するからだめ、と考えるのではなく、この原則のそもそもの理由を考えるのが得策です。

リクエストに応えてはいけない

この原則も種明かしの場合と同様、一番まずいのはマジックをやった直後に「もう1回やって」と言われて、やってしまうことです。しかし、これを言われてもうろたえることはありません。少なくとも1回目は種がわからなかった、すなわちとりあえずマジック自体は成功した証なのです。2回見せてしまうことの問題は種がばれるだけでなく、最も肝心な主導権がマジシャンから奪われてしまうところです。

種明かしのときと同様、2度できないものはできないと言うしかないのですが、いくつかセリフの例を考えてみましょう。ポイントはやはりユーモアと誠実さです。

「同じマジックは2回やってはいけないという決まりがあるんですよ」(サーストンの3原則の存在自体を利用する)

「残念ですけど、このマジックは1日1回しかできないんですよ」(なぜか不思議と説得力のあるセリフ)

「マジック教室の先生に同じマジックは2回やってはいけないと言われてるんですよ」(マジック教室に通っているという事実を利用する)

ところで、もともと2回以上繰り返せるマジックや、2回以上演じる予定だったマジックについて、「もう1回やって」と言われた場合はどうでしょうか?もちろん、もう1回演じて良いのですが、言われるがままに2回目を演じると、やはり主導権が奪われるのが少し気になります。そこで高等テクニックのひとつとして、『わざと1回は断る』というのがあります。例えば、「本当はこのマジックは1回しかできないんですけど、今日は特別にもう1回だけ」と言って演じてみるのです。そうすると一層不思議さが増し、却ってもう1回と言われにくくなるものです。

ボリューム不足

人によっては、特に優しい人ほど「もう1回やって」のリクエストを断るのを申し訳なく感じます。しかし逆に言えば、マジックはもともと「1回だけ演じて種明かしもなし」の状態でエンターテイメントとして成立していなければ、そもそもマジックとしてだめなのです。

これも種明かし問題と同様なのですが、「もう1回やって」と言われるのはマジシャンの側にも原因があり、工夫の余地はあります。ずばり「もう1回やって」の原因は、そのマジックの時間的、内容的ボリューム不足です。

例えば、「ここに500円玉があります。左手に握ると…、はい消えて右手から出てきました」というようなマジックを演じたら、仮に1回目は通用したとしてもまず間違いなく「もう1回やって」と言われるはずです。

反対に、長々としたセリフとともに、4枚のエースと4枚のキングが1枚ずつ取り出され、それらが複雑に入れ替わったり変化したりという、重厚な手順を見せられたとき、(その手順の是非は別にして)人は「もう1回やって」と言うでしょうか?もちろん言いません。仮に面白くても十分満足ですし、つまらなければ途中で飽きて辟易としているので「もう1回」はないのです。

アマチュアマジシャンの特徴として、初心者はできるだけ短くてシンプルなマジックを好み、中上級者は(全員ではありませんが)ある程度複雑で長いマジックを好みます。しかし、短くてシンプルなマジックほど、種がばれやすく、もう1回やってと言われやすく、危険で上級者向けです。通常、コインのマジックを演じる場合、消失や出現、貫通、変化などいくつかの現象を続けて起こし、ある程度のボリュームをもたせて演じるのはこのためです。また、非常にシンプルなマジックでも、話によって内容的にボリュームをもたせることもできます。

私もですが、飽きさせない範囲で、十分なボリュームのマジックを目指しましょう。

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