サーストンの3原則再考③「先に現象を説明してはいけない」について

3原則最後は「先に現象を説明してはいけない」です。

「先に現象を説明してはいけない」場合の具体例

例えば次のようなセリフはどうでしょうか?

「今からトランプを1枚選んでいただき、そのカードを当てるというマジックをします。ではどれでも良いですから好きなカードを1枚選んでください。」

冗談かと思われるかもしれませんが、マジックを始めたばかりだと、このようなセリフを言ってしまう方はたくさんいます。しかし、これでは自ら疑いを招いてしまっており、「トランプに仕掛けがあるんじゃないの?」「その前にトランプを切らせてよ」などと言われてしまいます。これは観客のマナーが悪いのではなく、マジシャンの進め方に問題があるのです。

この場合、次のようなセリフはいかがでしょうか?

「トランプのマジックです。いろんなカードがありますね。では1枚カードを取ってください。」

これなら様々なトラブルを回避できます。おそらくほとんどの方が普通に1枚とってくれるのではないでしょうか?それはやはり現象を先に説明していないからです。たとえ種を見破ろうとしている観客でも、見破る対象である現象に関する情報が与えられていなければ、考えようがないのです。

テレビは例外?

ちなみにMr.マリックさんは、「今から○○します」と先に現象を宣言してマジックを行うことが多いので有名ですが、これはテレビという媒体の影響も大きいと思います。テレビはとにかく視聴者に見続けてもらうことが大切、特にCMを挟んでも見続けてもらうのが大切なので、先に「今から○○します」と宣言し、なんなら字幕でも表示することで、視聴者は「それなら○○するまで見ていよう」という気持ちになるものです。

当然ながら視聴者はマリックさんに途中で注文を挟むことはできませんので、先に現象を説明しても問題ありません。しかし、テレビではない現実で相手の手の届く距離でマジックをする場合、特にまだ実力があまりない場合は、先に現象を説明しないほうが良いでしょう。やはりサーストンの3原則はよくできているのです。

おわりに

先日、私の教室で、あるマジックについて、自分の使うセリフを書き出してもらうことをしました。すると案の定、先に現象を説明してしまう場合が出てきました。「しゃべりが上手くなりたければセリフを書き出してみなさい」というのはよくあるアドバイスですが、実際にやってみる人は少ないものです。もちろん面倒くさいからです。

しかし教室ならある程度の強制力があるので実行に移すことができます。この記事を読んだ皆さんも、ストイックな方はぜひ、何かのマジックのセリフを最初から最後まで書き出してみてください。きっといろいろな発見があると思います。

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