カップ&ボールのクライマックス考

最近、具体的なマジックの話が少なかったので、今回は久しぶりにカップ&ボールについて書こうと思います。コロナでマジックを演じる機会も少なくなっていますが、刃が錆びないように磨いておきます。

クライマックスなし!?

カップ&ボールと言えばカップの中で小さなボールが出たり消えたりしながら、最後はカップから大きな品物が出てくる構成が多いですが、中にはクライマックスのない手順もあります。特に、比較的初心者向けとされる手順は、技術的に難しいジャンボクライマックスを省いて、小さなボールの現象のみで構成されていることがあります。

ところがこのようなクライマックスなしの手順も、しっかり練習してみると意外と難しい部分がたくさんあり、カップ&ボールの大切なエッセンスが詰まっていることがわかります。それもそのはずで、カップ&ボールの本編は小さなボールのパートです。なぜなら、ジャンボクライマックスのみを見せたいなら、最初から空のカップを改めていきなりレモンなどを出せばよいからです。

常識で考えれば、たとえ小さなボールひとつであっても、カップから出たり消えたりするのはありえない現象のはずで、それが不思議でないということはないはずです。また、小さなボールの現象のみで終わった雰囲気を出すことを考えるのも良い訓練になるのではないかと思います。

少なくとも、無理にジャンボクライマックスを演じて種が見えてしまうくらいなら、小さいボールだけで終わった方が良いはずです。

とはいってもジャンボクライマックスも捨てがたい効果がありますし、練習次第で十分できるようになると思います。しかし、自分一人で練習しているとどうしても判断が甘くなりますので、誰かに指導してもらう方が確実だと思います。

保険のラバーボール

カップ&ボールのクライマックスとして最も有名なのはレモンですが、その他にも大きいオールを出したり、ジャガイモなどの他の品物を出すこともあります。

多くのマジシャンの意見として、単に大きいボールを出すよりも、レモンなどの野菜を出した方が驚かれやすいと言われています。また、レモンはスマートですがなんとなくおさまりが良すぎる感じがするので、ジャガイモの方が更にウケるという話もあります。

ただし、私が個人的に忘れてほしくないのは、かの有名なヴァーノン・ブックにも書かれている「野菜が手に入らなかった場合のためにラバーボールを用意しておくこと」です。ラバーボールとはつまり、ゴム製のボールのこと、例えばスーパーボールやラクロスボールのようなものです。このような腐ったりしないクライマックスボールを用意しておくと安心です。

ちょっと注意が必要なのは「ニットボール」でなく「ラバーボール」という点です。ニットボールは本当は中身が固かったとしても見た目が柔らかそうなため効果が落ちます。もちろんスポンジボールもダメです。お客様はなぜかボールが固いか柔らかいかに物凄くこだわります。もちろんラバーボールも出現した後はきちんと固いことを示します。

 では、イミテーションの果物はどうでしょうか?ステージや、パーラーなど、お客様とある程度離れており、十分にリアルなレプリカなら大丈夫かもしれませんが、個人的には「本物のゴムボール」は「偽物のレモン」に勝ると考えています。スーパーボールはあくまで本物のスーパーボールだからです。この辺の感覚は皆さんならどう思うでしょうか?

おまけ レモンを縮める!?

市販のレモンは意外と大きいのをご存知でしょうか?いくらマジシャンと言えどカップに入らないものは出せません。そんな時はレモンを常温で1~2週間放置しておくと、水分が抜けて10~20%小さくなります。余程悪条件でなければ腐ることはありませんし、少し硬くなるだけで見た目はほとんど変わりません。興味があればお試しください。

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