「鬼門」とは、一般的に多くの人が苦手とする事柄をいいますが、カードマジックの鬼門とは何でしょうか?私なりに4つ挙げてみます。
カードマジックの鬼門と聞いて、カードマジックをよく知っている方なら、「パスやパームかな」と思うかもしれません。しかし、それは相当な上級者の話です。
もう少し一般目線のマジシャンならば、「いやいや、ダブルリフトやダブルカットだって最初は難しいぞ」と思うかもしれません。実際その通りだと思います。
しかし、私が思う、本当に一般の方がカードマジックをする上で鬼門となるのはもっと基本的なところです。
カードマジックの鬼門1 カードの読み
まず、一般の方はカードを正確に読めません。スペードが読めなかったり、クラブのことを三つ葉とかクローバーと読んでしまう人はかなり多くいます。カードマジックを見る側ならまだしも、演じる側なら正しい読み方を覚えてほしいものです(ただし、本当の名称を知った上で適宜お客様に合わせるのは良いと思います)。
また、絵札やジョーカーも同様で、キングとジャックを混同したり、エースをエー、クイーンをキューと読んでしまったりする人もいます。そしてマジシャンなら、良い加減ジョーカーをババと呼ぶのはやめた方が良いと思います(これも正確な名称を知った上で、あえてキャラ付けでそう呼ぶのならありだと思います)。
長期的に見ればマジシャンの側ももっと啓蒙するべきだと思いますが、マジシャンだけでもカードの正しい読み方を知ってほしいと思います。
カードマジックの鬼門2 カードの記憶
たった1枚のカードの記憶すら困難な場合があります。それもそのはずで、カードの読み方が曖昧だと、当然記憶もしづらくなるのです。カードの読み方を徹底的に覚えることで自然とカードそのものに馴染み、記憶もしやすくなると思います。
カードマジックの鬼門3 カードの抜き出し
普通の人は、1組に混ざってしまった2枚のジョーカーを抜き出すのに想像以上に時間がかかります。これもやはりトランプ自体に慣れ親しんでいないこと、正しい持ち方や扱い方を知らないことが原因です。ところが正しい持ち方や扱い方を教えても、今までの癖を直すのは相当大変で、やる気と努力が必要となります。
あらゆる物事に通じると思いますが、フォームの矯正は困難を伴います。なぜなら、フォームを矯正した直後は今までよりもやりづらく、下手になるからです。そこを我慢して乗り越えることで矯正前より上達できるのです。
カードマジックの鬼門4 ヒンズーシャッフル
カードマジックを学ぶなら「トランプを切る」という曖昧な表現で満足してはいけません。トランプの切り方はたくさんあって、それぞれ特色が異なるのですから、一つひとつ区別する必要があります。
なかでもヒンズーシャッフルは最も基本的なシャフルの一つで、通常、日本人がトランプを切るときのやり方に似ているので必須の技法です。しかし、ヒンズーシャッフルと多くの日本人が行うシャッフルは似て非なるものですから、一から練習しなくてはいけません。例えば本で学ぶにしても、信用のおける本で、指の一本一本の位置まで確認しながら注意深く練習しましょう。
ヒンズーシャッフルが簡単だと思ってはいけません。非常に高度な技法で多くの練習を必要とします。逆にいえば「普通の切り方すらできないなんて、自分はなんて不器用なんだ」と落ち込む必要もありません。正確なヒンズーシャッフルは難しいのです。
ここから導けるのは…
これらの視点はカードマジックを見せる場合にも重要になります。例えば皆さんはカードマジックが思ったよりもウケなかったことはないでしょうか?ウケない理由は様々ですが、その一つに、マジシャンが思っている以上に普通の人はトランプに馴染みがないという点が挙げられます。
そもそもクラブが読めない、絵札が読めない人は、マジックの現象を理解するのに精一杯であり、驚く余裕がないこともあります。
かといって、私は極端にシンプルなマジックだけを演じることを推奨するわけではありません。普通の人のトランプに対する認識を理解した上で、適宜説明を補ったり、わかりやすい見せ方をすることで、多種多彩なカードマジックを面白く演じることはできると思っています。願わくばすべての日本人が♣を読めるようになりますように。