マジックの失敗論

現在ではアマチュアでもマジックの上手い方はたくさんいますし、またプロマジシャンのショーを観ていても意外とプロでも(技術的に)簡単なマジックをやるんだな、と思うこともあると思います。

マジックの成功率

あなたは自分の演じるマジックの成功率をどのくらいだと見積もるでしょうか?

人は誰しも、ついつい自分に甘くなってしまうものです。だから自分の演じるマジックは、たとえ得意なレパートリーであっても、成功率を高めに認識してしまいます。

私の感覚ですが、アマチュアマジシャンで成功率90パーセントという方は、かなり優秀だと思います。

しかし、90パーセントの成功率のマジックを3作品演じるとすると、0.9×0.9×0.9=0.729となり、全部のマジックが成功する確率は70パーセントほどに下がってしまいます。

もし30分のショーをするとして、10作品演じるとすると、成功率90パーセントの場合、0.9^10≒0.35となり、すべて成功する確率は35パーセント、65パーセントの確率で何らかの失敗をします。

では、どう対策したら良いでしょうか?

確実なマジックを散りばめる

人間のすることですから、プロであってもアマチュアであっても成功率100パーセントというのはありえません。

それでも成功率99パーセントくらいの確実なマジックをショーの中にいくつか織り交ぜることで、少なくとも失敗ばかりしていた印象になるのは防げます。

プロマジシャンが意外と簡単なマジックを演じることがある理由のひとつがこれだと思います。

致命的な失敗を防ぐ

実際にはプロマジシャンも、とても上手なアマチュアマジシャンも、よく失敗します。

しかし、その多くは小さな失敗で、観客に気付かれずに済んだり、後から軌道修正したりして、事なきを得ています。

逆算して、プロマジシャンは演目選びのときから、致命的な失敗をしにくいマジックを選んでいるともいえます。

私の感覚で大まかに例を挙げると、致命的なミスとは種が見えること、種がバレることなど、軽微なミスとは(種とは関係ない部分で)道具を落とすこと、現象が起こらないことなどです。

スポーツやジャグリングに学ぶ

それでは、失敗しにくい確実な演目しか演じてはいけないのでしょうか?

ある意味ではその通りですが、しかし、プロアマ問わず、ときにはチャレンジングな演目を演じても良いし、それはそれで緊張感が生まれて面白いと思います(すべてチャレンジングな演目というのはおすすめしません)。

マジックの場合、なんとなく演者も観客も成功して当たり前という気持ちになっていますが、他のジャンルではそうでもありません。

たとえばメッシもシュートを外しますし、大谷選手でも三振します。しかし、上手くいったときにはより大きな感動があります。

また、もっと近いジャンルでいうとジャグラーの人も難しい技の場合はしばしば失敗します。

しかし、ジャグラーは難しい技をただで失敗するわけではありません。いろいろな見せ方はありますが、例えば、次の技は非常に難しい技なのだということを観客と共有し、緊張感を高めて演じることで、一度失敗して二度目、三度目にようやく成功したとしても、大きな拍手がもらえることもあります。

つまり、マジシャンも難しい挑戦をしつつ、観客と気持ちを共有することができれば、必ずしも失敗してはいけないわけではないのです。

ただし、種が思い切り見えたりするのはさすがに致命的なミスであり、マジシャンの評価を下げるだけなので気を付けましょう。スポーツに例えるならファールのようなもので、さすがに応援できないものです。

おわりに

マジシャンたるもの失敗はつきものですが、もしあなたがあるとき、いくつもの作品を演じ、それらがすべて成功したのなら、それはとても誇らしいことですし、努力の賜物です。

また、ショーを観にいって、そのマジシャンがすべて成功していた(ように見えた)のなら、そのショーを観られたこと自体がとても幸運です。

それがライブショーの面白さでもあります。

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