ステージマジックを始めたばかりの人からよく受ける質問のひとつが音楽です。
音楽を使うメリット
ステージマジックで音楽を使うメリットのひとつは、しゃべる必要がなくなる、という点です。マジックを始めたばかりでは、なかなか口も八丁手も八丁とはいかないもので、手元に集中するとしゃべれなくなり、しゃべり始めると手が止まる、といった風になりがちです。音楽さえ流れていれば、とりあえずはマジックに集中できますので、やりやすいという人が多いようです。
もちろん、音楽を使うからといってしゃべってはいけないわけではなく、声をかき消さない程度のボリュームに絞れば、音楽としゃべりも両立できます。その場合も、多少しゃべりに変な間ができてしまっても音楽があれば気になりにくいというメリットがあります。
また、マジックを観る側にとっては、BGMがある方が本格的に感じるという面もあります。
音楽を使うデメリット
やはり音楽を使う以上、音響操作をどうするか、音響のリハーサルをしたり、音響トラブルがあったり、といった煩雑さがデメリットです。ただし、音響操作を可能な限り単純化することで、これらの問題はほとんどの場合、乗り切れると思います。
どんな音楽を使うか
音楽の選び方は本当に難しく、私としても「これを使いましょう」というよりは皆が多種多様な音楽を使っている方が望ましいと思っているのですが、世の中にある音楽があまりに多すぎてどうしても決められない、という方のために1枚だけ推薦しておきます。
このアルバムには有名な「オリーブの首飾り」も収録されています。この曲は日本で松旭斎すみえさんが使ったことで一躍マジックの代表曲となりましたが、私のおすすめはこのアルバムから敢えて「オリーブの首飾り」以外の曲で、自分のマジックにあったテンポや曲調のものを選ぶことです。というのも「オリーブの首飾り」はあまりに曲の印象が強すぎて、コメディになってしまうことがあるからです。もちろんそれを逆手にとって笑いを取ろうという使い方もあるかもしれませんが、通常は「オリーブ~」は避けた方が無難です。
また、このアルバムの注意点としては、基本的に40~50年ほど前の曲になるので、だいぶ古い印象です。音楽にも流行りがありますので、特に若い人の場合は古く感じるかもしれません。とりあえず、このアルバムを聴いてみて、そこから「もっとこんな感じの曲が良いな」などと希望が出てきたら、切り換えていけばよいと思います。私自身は現在は自分のマジックにポール・モーリアを使うことはありませんが、改めて聞いてみると、少し古い印象はあるものの、やはり音楽として素晴らしい作品だなと思います。
最後に残念なお知らせをひとつ。私の今までの経験上、マジックにおけるBGMは、マジシャンが思っているほどには、お客さんは気にしていないということです。「音楽が流れているか、流れていないか」はそれなりに重要ですが、「何の音楽が流れているか」はそれほど気にしてもらえないのが普通ですので、まずはそれほどこだわらずに、マジックの邪魔にならない音楽を選べれば、最初の一歩として十分なのではないでしょうか?