前回の記事で、ロープマジックの良い本が少ないと書きましたが、それではロープマジックは廃れてしまっているのでしょうか?
ロープマジックの現状
私見ではロープマジックは全く廃れていません。プロマジシャンにとっても、多少の得手不得手はあるでしょうが、30分又はそれ以上の長いステージショーを構成するとき、ロープマジックがプログラムに組み込まれる場合はかなり多いと思います。
またアマチュアマジシャンの場合も、マジッククラブ等の発表会でロープマジックは定番ですし、ボランティアなどでショーが行われるときも、やはりロープはよく演じられています。
ロープマジックの将来性
私はまた、今後もロープマジックが廃れることはないと考えています。というのも、歴史的に見ても、あるマジックが廃れるのは、そのモノ自体が廃れることとほぼ同義であるからです。
例えば、懐中時計や、レコード盤、煙草のパイプを使ったマジックは以前はよく演じられていましたが、現在はあまり見かけません。また、少し前にMDを使ったマジックもありましたが、今は厳しいと思います。(ただし、懐中時計やレコードなどは、アンティークとして人気がありますから、そのような趣を狙ったマジックとしては今後も残ると思います。あくまで大流行はないということです。)
また、今後難しくなるマジックとしては、タバコ、マッチ、CDなどが挙げられると思います。パイプはもちろんですが、普通のタバコ自体が世間からの風当たりが強くなっていますし、タバコにマッチで火をつける人も見かけません。CDはまだまだ健在のようですが、音楽はダウンロード販売が主流になり、ちょっと古い印象になります。また、キャッシュレスが進むと、コインやお札を使ったマジックも減るかもしれません。
その点ロープは当面の間大丈夫なのではないでしょうか?いかにITが進歩しようとも、ロープ、いわゆる紐がない世界というのはちょっと想像しにくいと思います。荷造りはもちろん、服飾やアウトドアなど、様々な場所で今後も使われ続けると思うからです。ロープが存在する限り、ロープマジックも廃れないのです。
ロープマジックが流行らない場所は?
一方、ロープマジックがあまり演じられないところもあります。マジックコンテストや動画サイトです。コンテストではオリジナリティが重視されるため、ロープマジックは素材のシンプルさゆえに独自性を出しにくいのが原因かもしれません。
また、YouTubeなどの動画サイトではやはりカードやコインが主流で、ロープは少ないようです。動画サイトでマジックを披露する動機としては、高い技術を認めてほしく、難しいマジックを演じたいという気持ちがあるため、カードやコインの超絶技巧が流行るのかもしれません。また、ロープマジックの長所である、「一度に大勢に見せられる」という点が、動画では何の意味もなくなってしまうことも原因かもしれません。
逆に言えば、「実際にいる多くのお客さんに楽しんでもらう」という動機の場合には、ロープマジックは優秀であるといえるでしょう。
本について
ロープマジックは良いDVDなどの教材もたくさんあるため、ロープマジック自体の心配はしていないのですが、私としてはやはり本、とくに基本的な入門書がないのは寂しいので、登場を待ち望んでいます。冷静に考えると高木さんの本が約30年前、藤山さんの本が約10年前なので、時期的にはそろそろなのかもしれません。そんなにいうなら自分が書けばよいのですが、実は私自身もロープマジックの本を書いてみたい気持ちはあります。ただマジック界的に私がふさわしいかわかりませんので、何とも言えないのですが、もし数年後に私の本が出版されたときは、皆さんご購入をよろしくお願いします(笑)。