ロープ切り 3つの誤解

 今回はロープ切りに関して、通説とされている3つの視点を再考することで、皆さんにもそれぞれの意見を育んでいただけたらと思います。

ロープ切りの誤解1「観客に切らせた方が効果がある?」

 ロープを切って元通りにするマジックは、マジシャン自身が切る場合と、お客様に切っていただく場合があります。一見、観客が切った方が公明正大で良い印象があるかもしれません。しかし、私はマジシャンが自分で切ることをおすすめします。

 最大の理由は怪我の防止です。マジシャンがロープを持って観客に切らせる場合、怪我をする可能性はゼロではありません。特に観客に手や指を切られてしまったマジシャンを私は知っています。切った側も切られた側も悪夢のマジックショーになってしまうため、私は自分で切るのをおすすめするのです。

 また、観客がロープの好きなところを切って良いなら、観客に切らせる意味があるというものですが、多くの場合はマジシャンが指定したところを観客が切らなくてはいけません。これでは公明正大どころか、「他の場所を切ったらどうなるのだろう」「ここ以外を切ったらダメなのだな」と余計な勘繰りをされ、逆効果になりかねません。

安易なオーディエンス・インボルブメント(観客の関与)は主導権を奪われかねず、危険なのです。

ロープ切りの誤解2「一度切ってつなぐだけで十分?」

 偉大なるマックス・マリーニは「ロープは一度切ってつなぐだけで十分だ」と言っていたそうです。おそらく、ロープマジックはいたずらに手順を長く、複雑にしてはいけないという意味だと思いますが、どうでしょうか?

 確かにロープ切りは1回だけでも十分不思議なマジックですが、2回、3回と繰り返す手順も多く存在しています。そしてそれらがすべてダメだとは私は思いません。2回切ったから2倍不思議だ、とまでは言いませんが、何度切ってもつながる、というのは実際に不思議さが増加していると思いますし、お客様も驚くものです。

 アンビシャス・カードではありませんが、繰り返すことで不思議さが増す場合もあるのです。

ロープ切りの誤解3「ロープ切りは神秘的なマジック?」

 ロープ切りは神秘的なマジック、はたまた復活マジックはすべて神秘的なマジックであるという考え方があります。もちろんそういう面もあるでしょう。しかし、ことロープ切りに関してはどうでしょうか?

 演者の雰囲気、演じ方によっては神秘性を醸し出すこともできると思いますが、ロープという素材の特性上、そこまで重厚なマジックにはなりにくいのではないかと思います。どちらかといえば軽快でテンポの良い演技の方が好まれるのではないでしょうか。

おわりに

3つの視点から私の考えをご紹介しましたが、皆さんに絶対に賛成してほしいわけではありません。この記事を読んで改めて皆さん自身の考えを深めていただければ幸いです。

ロープ切りは刃物を使う以上、練習・本番ともに安全に気を配って取り組んでください。また、ハサミといえどポケットに入れて出歩くのは違法です。携帯時は必ずケースに入れた上で、鞄の中にしまっておいてください。

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