マジックの手順づくりにおいて、非常に陥りやすい落とし穴があります。アマチュアはもちろん、経験の浅いセミプロくらいの方でも注意が必要なので、ぜひこの記事を読んで参考にしてください。
「道具しりとり」とは
「道具しりとり」は私の造語です。2つ以上のマジックを続けて演じる手順の場合、アマチュアマジシャンは無理に道具をつなげようとする傾向を非常に多く感じるので、このように名付けました。典型的な道具しりとりの例は次のようなものです。
①20世紀シルクの最後にシルクからロープが出てくる
②ロープマジックが終わったらロープをチェンジングバッグに入れ、トランプに変える
③トランプがペットボトルに入り、中身のジュースを使って液体のマジックへ・・・
この手順をみて「よくまとまった良い手順だ」と思った人は要注意です。道具しりとりの特徴は、なんの必然性もなく、ただ道具のつながりだけで脈絡のないマジックを羅列したものです。これはストーリーでも何でもありません。ちょうど、しりとりで語尾が語頭につながっているだけで、なんの脈絡もない単語が羅列されるのにそっくりです(りんご→ゴリラ→ラッパ→パセリ?)。
「自然でスムーズなつながり」との区別
一方で、もっと自然でスムーズにつながった手順もあります。例えば次のようなものです。
①白いシルクを3枚出現させる
②3枚のシルクが赤、青、黄に変色する
③3色のシルクで20世紀シルクを演じる
(有名なデバントの手順)
①観客がカットするエース
②そのエースを使ってエースアセンブリ
このように自然でスムーズにつながった手順は私は良いと思います。あくまで、無理矢理ロープマジックとカードマジックをつなげる必要はないと言いたいわけです。
どうやって手順をつくればよいのか
ではどうやって手順をつくればよいのでしょうか?
まず、手順は1分から5分くらいが目安のユニットとして作りましょう。例えばロープが3分、四つ玉が2分、カードマジックで5分、といった感じです。それらを組み合わせてひとつのショーを構成するのです。
例えば15分の出演をする場合、15分でひとつの手順を演じるのではなく、3~5つくらいの手順ユニットを組み合わせて構成するのです。そうすることで、ユニットを増減させることで時間の調整も可能になるメリットがあります。
「では3~5つの手順ユニットは、それぞれ何の脈絡もなくてよいのだろうか?」と不安になる方もいるかもしれません。基本的には別個の手順でOKです。ただし、道具しりとりとは別のつながりを持たせることができます。
あなたのショーは「道具」ではなく、「あなた自身のキャラクター」や「世界観」でつながる
先に述べた通り、道具だけで手順をつなげても、そこにはストーリーも世界観も存在しません。だから手順はあなた自身のキャラクターや世界観でつなげるべきなのです。
キャラクターや世界観というと、すごく難しく、大変そうに感じるかもしれませんが、全然そんなことはありません。
例えば、キャラクターでいえば、あなたはどんな人に見えるでしょうか?若い人、年を取った人、真面目な人、面白い人、格好良い人、可愛い感じの人、様々で、どんな人も魅力的だと思います。その上で、あなたに似合うマジック、似合う道具を使うべきです。似合うというのは、あなたがそのマジックを演じたとき、その道具を持ったときに好印象である、という意味で考えてください。
(余談ですが、私たちは自分や他人に対して、もっと肯定的になるべきです。昨今は「若者は生意気」「年寄りは老害」「真面目な人はつまらない」「冗談を言う人はふざけている」「格好良い人は格好つけている」「可愛い人はあざとい」などと、なんでもかんでも否定的にみる言説で溢れています。そうではなく、ひとつひとつが多様な個性であり、魅力だと考えなくてはいけません)
世界観についても、難しく考える必要はありません。まずは「和風」か「洋風」か、「現代風」か「古風」か、などのようにイメージで統一感をもたせていけばよいでしょう。当然ですがクラシカルな衣装でペットボトルを持ち出したり、モダンな服で古風なステッキを出したりしたら、違和感があるかもしれません。
(余談ですが、石田天海さんの和服のミリオンカードは格好良いです。明治大正は和と洋が絶妙に交じり合った時代で、それもひとつの世界観といえるでしょう)
おわりに
この記事を読んだ方は、私が道具しりとりと呼ぶものが何か、なぜそれが良くないかがわかっていただけたと思います。道具しりとりは悪いというより、ほとんど効果がないので、別の観点で手順をつくった方が良いのです。
また、手順づくりやショーの構成において、「キャラクター」や「世界観」という価値観が加わることで、演じられないマジック、使えない道具が出てくる可能性もあります。しかしそれは悪いことではなく、あなたのショーが個性をもち始めた証拠で、進歩の証です。
皆様がそれぞれの魅力を発揮し、個性豊かなショーを演じられることを願っています。
