前回の記事で手順作りの大変さを取り上げましたが、同時に手順作りはこの上なく楽しいものでもあります。
マジシャンは新しい手順に取り組むとき、様々な夢や希望、憧れを抱いています。
逆にそのような気持ちがなければ、その手順に取り組むこともないでしょう。
未完成の手順はあらゆる可能性をもっており、様々な魅力を放っています。
同時に問題点はそれほど目立たず、なんとなく解決可能であるかのような顔をしています。
そのような試行錯誤中の段階がある意味最も楽しいといってよいでしょう。
しかし、いつかは実演する以上、いつまでも未完成というわけにはいきません。
そこである程度方向性を絞っていって、現実的に可能な手順に落とし込んでいくわけですが、その過程でどうしても切り捨てられる部分も出てきます。
そうすると、さすがに無限の可能性がある手順とまでは思えなくなってきます。
また、問題点も顕著になってくるので、そちらとも闘わなくてはいけません。
完成に近づけば近づくほど、大変さが目立つようになるのかもしれません。
そして、まだ改善の余地はあるかもしれなくとも、観賞に堪えられる状態に持っていき、一応の完成とするわけですが、この頃になると、その手順に対する理解も深まっており、安定感も出てきていますが、その分手順に対するワクワク感は無くなってきます。
その代わり、実演することそのものへのワクワク感がそれを補ってくれるということはあります。
ほとんどのマジックの考案、研究、練習はこのようなサイクルをたどっているような気がします。
つまり、最初は楽しいけれど、徐々に険しい道のりになっていき、最後はもはや演じていてちっとも楽しくないというレベルになって初めて、観客に見せられるというサイクルです。
もちろん演じることに対する喜びはありますが、嫌というほど練習しなくてはいけないのもまた事実なのです。
